リトバスパーティー2 コピー本「主婦かな。」表紙+佳奈多SS『SWEET SWEET HOME』サンプル公開

 ようやくあがりました。まだ本は完成していないんですが。こんな表紙になりましたのでご紹介したいと思います。
 絵はいつものとおり、みちゃ氏にお願いしてます。

 SSのサンプルは以下のようになってます。昨年の夏コミに出した『SWEET HOME』と同じく、佳奈多シナリオのアフターです。『SWEET&BITTER』シリーズとは違い、はるちんとのキスシーンを通っていない、普通の佳奈多エンド後になってます。違いを楽しんでいただけたら。
 ちなみに、『SWEET HOME』を読んでいなくても全く問題の無い作りにはなってますが、もし合わせて読みたい、と言う方が一人でもいたら…と思うので、他の佳奈多本のもう一冊と共に、少しだけ刷って持っていこうかと思います。


『SWEET SWEET HOME』



「なおえー、はるかー、朝ごはんよー」

 朝はこんな決まり台詞から始まる。
 言葉だけ聴けば、家族のそれと変わらない。

「ふわぁ…おはよう、二木さん」

 呼べばすぐに起きてくるのは男の子のほう。
 眠い目をこすりながらも、いつも同じくらいの時間に起きてきてくれる。
 問題は…もうひとりのほう。

「葉留佳は?」
「うーん、まだ寝てるっぽいけど」
「ちゃんと起こしてきなさいよ」
「えぇーっ。朝からそれは重労働だよ…」

 もうひとりの女の子…葉留佳のほうは、朝に問題があるらしい。
 しかも、重労働なくらいに起こすのが難しいみたいだ。

「起こしてくれないと朝ごはん食べさせないわよ。
 ほら、さっさと行って」
「わかったよ…」

 そういってしぶしぶ寝室へと戻る少年。
 それを見届けた後、朝ごはんの続きに取り掛かった。




「はぁ〜、もうはるちんはおねむですよ。ねむねむ」
「そう言いつつ、一番たまご焼き食べてるの葉留佳さんだからね」
「葉留佳。あなた実家から学校行ってた時よりも、遅くまで寝れてるんじゃないの?」
「それとこれとは別ですヨ〜。はー、あと5時間くらい寝たいなー」
「あと5時間も寝たら昼だよっっ」

 あれから5分ほどで起きてきた女の子と3人が揃って食卓を囲む。
 眠そうと口では言いながら、しっかりご飯を食べてる葉留佳にツッコむ理樹と佳奈多。

「あと、直枝は起きる前に、ついでに葉留佳を起こしてきなさい」
「はい。でもさ…」
「理樹くんの起こし方ってやさしーんだよ?」
「そういうこと言う前に自分で起きなさい」
「えー。今日も夢の中で、理樹くんに抱きかかえられて起こされた夢見てー、目が覚めたら目の前に理樹くんがいたんだけどー」
「な…お…え?」
「ちょっと葉留佳さん捏造しないでっ。あと、こんなだから葉留佳さん起こすの気が進まないんだよっっ」
「ちぇーっ。あー、別に理樹くんじゃなくてもいいんだよ? お姉ちゃんに目覚めのキスでもしてもらったら、はるちん一発で起きちゃうかも」
「キス? 私が…葉留佳に? そ、そんなことできるわけっっ…、って、朝の私にそんな時間は無いのっ!」
「ちぇっ。上手くいくと思ったんだけどなー」
「上手くいくつもりだったんだ?!」

 3人が集まれば、話題に事欠くことはまずない。というか、ちょっとうるさいくらいだ。
 でも、こうしてみんながいて、元気で暮らせているからこそ、こういう風景が続けていける。
 もう少し2人にはしっかりしてほしい…とも思いつつ、こんな日常が送れる幸せもかみ締めなければいけない。複雑だったが、彼女にとっては充実した日々になっていた。

「お姉ちゃんはしないの?」
「何を? 葉留佳にはしないわよ」
「ううん。理樹くんへのお目覚めのキス」
「し…しないっ、しないわよっっ。キスなんてっ、絶対っっっ」
「え…? してくれないん…だ……」
「するわよっ、キスくらいっっ。恋人にキスしなくて何が恋人なの?」
「やー、やっぱりするんですネー、お目覚めのキス」
「だーかーらっ、そんな恥ずかしいキスはしないのっ」

 若干もてあそばれてる気はするものの、本気で怒る気にはならないあたり、もう昔の自分ではないことを自覚はしている。
 だから、もう後ろは振り返らない。今の暮らしを壊さないように、しっかり自分が支えていかないといけない…そう思い直していた。




「「いってきまーす!」」
「いってらっしゃい。気をつけて行くのよ」

 そういって、バイトへ向かう2人を見送るのも日常の光景だ。
 アパートの自室の前から階段の下まで見送った後は、日常の自分の仕事が待っている。
 
 3人の復学へ向けての手回しはもちろん必要だ。
 二本家の妨害やら、自分自身を取り戻しに来るかもしれないあたりも考慮しているが、それ以上に、半ば突発的に休学してしまったあたりをどう繕うかが当面の課題だろう。復学するにしても、見知った生徒が在学している間に戻れることに越したことは無い。全く関わりの無い相手ならともかく、佳奈多自身を救ってくれたリトルバスターズ!のメンバーがいるのだ。彼らがいるうちに戻れるに越したことは無い。
 彼女は、在学中のメンバーたちや、父親である晶にも動いてもらい、または葉留佳の両親とも協力して、あの町に戻れる方法を探ることを、昼間の間に行っていた。
 
 それとは別に…メインになりつつあるのが、家事全般だ。



 当初、3人で共同生活を始める際には、家事は分担しようということになっていた。
 けれど、2人は慣れないバイトを始めたばかりで、帰ってきてからのぐったり具合を見ているといてもたってもいられず、ほぼ家事は彼女が担当することになっていた。
 正直、理樹のほうが美味しい料理を作れたり、洗濯で細かいところに気遣えたりするのだが、負担になるのならと、彼女が肩代わりしていった。
 その結果として、ほぼ全てが彼女の担当になっていて、昼間にはそれらをこなさないといけないといけなくなっているわけで、大半が家事タイムとなってしまっている。

「葉留佳ったら…また洗濯物こんなとこに溜め込んで…しょうがないわね」

 3人の寝室の押し入れに無理やり突っ込まれたパジャマと、昨日着ていた服や下着を引っ張り出して、部屋の外の廊下にある洗濯機へ放り込む。他にも、タオルとかハンカチとか細かいものも出てきた。

「派手な下着ね…。
 えっ?! 葉留佳ってこんな派手なの着てるわけ?」

 明らかに自分では買ったことも履いたこともない柄の下着だった。
 自分のじゃない…ということは、履くのは妹しかいない。

「私と買い物に行ったときにこんなの買った覚えないのに…。いつ買ったのかしら」

 そんなにお小遣いもあげてないし、バイト代だってほとんど家に入れてもらってる。
 別に、少しくらい自分の懐に入れて好きな物を買うのは良いと思うのだが。こんな趣味なんだろうか。
 個人の嗜好に干渉するのも悪いと思い、あまり深くは考えずに洗濯ネットに入れてから、洗濯機へと投入した。

 洗濯物かごに入っている着用済みの衣類も、ズボンやスカートの中に紙切れやティッシュが入っていないかをひとつひとつ確認しながら、洗濯機へ投入していく。ひとつひとつ確認して…。

「直枝ったら、もうヨレヨレじゃない…」

 彼女が取り出したのは、一枚のトランクス。

「こんなのを毎日履いてるのかしら。見たら幻滅するわ…」

 毛羽立って明らかに履き古している感のするトランクスを、まじまじと観察する。

「柄のセンスはそう悪くないし…私は別に嫌じゃないけど」

 トランクス片手にぶつぶつと独り言を言う。
 第三者が見たらどう思うだろう?

「こんなに間近で見たこと無かったけど…ここのボタンは何の意味が…って」

 独り言でつぶやき、その自身の独り言に赤面し…。

「な…な、なな何を考えてるのっ私。ここのボタンを外したら直枝のアレが出てくるとかそんなっ。見たいなんて思ってないんだからっ、絶対っっ」
「あれ? 直枝さんところの…。お洗濯ですか?」
「っっ!!」

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 以上です。あんまりストーリーとして凄いものではありませんが、こんな感じです。これで半分に足らないくらいの文量ですね。それでは、当日 ”ス-08【ふく彦】”にてお待ちしています。