全年齢本が盛り上がらないジャンルは長続きしない理由について

 けいおん!好きで、けいおん本を関西のイベントで見ていて思ったんですが、全年齢ものがほとんど無かったんです。この前のこみトレ(9月にあった大阪での男性向け中心イベント)でもその傾向はあったんですが、11月に行った京都の「勧業祭」内でやった「京おん!」でも同じ傾向でした。つまりは「ちゃんとした本が無い」のです。
 ここで僕の言う「ちゃんとした本」ってどういう意味かと言うと、「全年齢向けで読ませる本」なのと「18禁展開でもシナリオがしっかりしている」本のことです。イラスト本を否定するわけじゃないですが、1枚もののイラストの中にシチュエーションを内包できる絵を描ける人ってのはなかなかいませんから、そういう意味ではイラスト本に「創作」的なものが入らないので、読むんじゃなくて見るものになってしまい、物足りなく感じるんです。
 関西における「けいおん!」ジャンルは、正直物足りないです。いや、東京に行けば違うのかもしれませんが、特に関西では「ちゃんとした本」を出しているサークルの絶対数が少なすぎます。ちなみに僕は、この前の京都のオンリーでも、買ったのはわずか3冊でした。内訳は、健全2のエロ1でした。人の多さもそれほどだったのでじっくり吟味して選びましたが、守備範囲を広げてもあと2冊増えたかな?と言う感じでした。
 
 さて本題ですが、全年齢本が流行らないジャンルは長続きしない、ということですが、これは合っていると思うんですよね。それについて書いてみたいと思います。
 全年齢本って、さっきのけいおんのところで書きましたが、やはり書き手がストーリーを考えて描いているわけですから、それは二次創作ですが「創作物」だと思うんですよね。書き手が「こういうエピソードがあってもいいんじゃないか?」とか「こういう話は面白いんじゃないか?」とか、そういうことを考えて生み出されてるわけですから、こちらもそれを楽しみにして読める…のです。
 そして全年齢本と言うのは、原作の世界観を同人作家さんたちが広げて、そして同人誌が更に同人誌を生んで、どんどんそのジャンルが深化していくわけです。時には原作よりも面白いエピソードも生まれたりするなど、例えば原作の単行本がなかなか発売されないときにはその間を埋めるのに同人が活躍するなどという効果もあります。
 
 それに対して、エロがメインのジャンルはどうでしょうか? けいおん!で言えば、エロにストーリー性を感じる作品はほとんどありません。唯のギター(ギー太)を買うのに援交したりとか、澪がイヤスキ展開になったりだとか、そういう話があまりにも多い気がします。僕が単に、好きな作品のエロ展開が好きじゃないという好みの問題もありますが、それでも本編の設定を生かしたエロ展開なら読んでみたいとも思いますし、そう思う作品が少ないと言うのは、作品が持つ面白さがエロ同人誌では生かされきっていないと言うことの表れでは無いかと思うのです。
 それにエロがメインのジャンルって、エロ分野として深化していくジャンルもあるにはありますが、とりあえずエロネタがやりたいけど、やるなら流行のジャンルでやりたいってケースが多いように思うんですよね。話としても「ただやるだけ」であったり、書き手が得意なエロシチュに無理やりその作品のキャラをハメ込んでしまうような内容が目立ちました。それってつまり、その作品である必要性が無い形態なんですよね。そういう趣向のサークルが集まったジャンルってのは、また流行りが移ればそちらに移るわけです。そして何も残らない…と。それに、ただ流行っているから、エロは売れるから、という理由で、安易にエロマンガを描いているサークルさんも多く見受けられます。どう考えても高校生くらいのサークルがエロマンガを売っていたりということもありますし…ってこれは話がずれてますが、サークル経験の薄い人たちが、手っ取り早く自分たちの本を売りたいからだとか、早く有名になりたいとか、そんな考えで流行りのジャンルのエロ同人誌を出したがるのでは無いのかと思ったりするわけです。
 また、エロの有名サークルさんがブームになっているジャンルで参加するケースも多いわけですが、アレもジャンルの継続性には繋がらないんですよね。エロの有名サークルさんって、もちろんジャンルを固定している人もそれなりにはいますが、多くが「そのジャンルだから売れる」というわけではなく、「その作家さん」だからこそ売れるわけです。もちろんステップアップする際にハマりジャンルがたまたまそれだったとかってケースもあるんですが、作家さん個人の人気があるサークルさんが一度くらい参入してきても、その作家さん(プロの場合)がその時に旬のジャンルをやるだけなので、長くても一年くらいしかそのジャンルにいないわけです。そもそも壁だったりしたら、他のサークルさんに人が流れたりということもありませんしね。
 
 
 ただし、エロメインでも長続きしたジャンルもあるんですよね。例えば「カードキャプターさくら」であったり「おじゃ魔女どれみ」だったりは、5年以上に渡ってエロでもサークル活動をし続けたようなところも多く存在しており、エロジャンルとして息が長かったです。前者はともかく、後者は確かにエロが多かったのものの、エロネタを長く続けていたんですよね。中心キャラも固定で。若干マンネリになっていたサークルさんもいたかとは思いますが、それでもコミケ以外に「ぷにけっと」などでも精力的に活動していたサークルさんが結構いました。
 興味深いのが、数年前にエロがメインで一大ブームになった「初音ミクボーカロイド)」ジャンルです。初音ミクがエロボイスを合成で発したり歌えたりすることからなのか、エロ目的の同人が瞬く間に流行り、いきなり男性向けジャンルのトップを奪ったことがありました。ですが、今はどうでしょう? コミケの男性向け同人サークル内でのボーカロイドジャンルは、ほぼ壊滅したと言っていい状態にまでなりました。そして今では、純粋に音楽をやるサークルさんがメインとなり、またミクやリンレン、カイトなどボーカロイドキャラたちの絡みだったり、有名曲の世界観を舞台にした創作をしてみたり、ニコ動などで生まれた亜種と呼ばれるキャラたちで書いてみたりなど、エロでない部分でジャンルが深化していっているわけです。今後も、一年や二年で廃れるってことは無いと思います。
 
 さて、長々と書いてしまいましたが、別にエロが流行っているジャンルを否定するわけじゃありません。ただ、エロい同人誌が大発生してブームになるようなジャンルは、その裏で全年齢向け同人に携わる人が増えてこなければ、そこでそのジャンルの成長や継続性は止まると言う事です。
 けいおん!ジャンルも、とらのあなメロンブックスに行けば、多くのエロ同人誌のほかに、面白い全年齢同人誌も、数は少ないながらもあるんですよね。どうもその流れは関西にまで届いてませんが…(同人イベントを見ている限りで)。原作もまだ終わっていませんし、今度の冬コミでどのくらい全年齢同人誌が出るのかが注目です。


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