絶滅危惧種 JRの「急行」

 前回の夜行列車のエントリと関連するのですが、JRの急行列車が姿を消そうかとしています。私鉄だと全然そんなことはなく、多くの私鉄で急行は運行されていますが、ことJRに限定するとほとんどの列車が姿を消してしまいました。残された急行列車も、もはや時間の問題ではないかと考えられます。
 しかしながら、JRの優等列車自体は大きく減っているわけではないのに、急行だけがなくなっていくのは何故でしょうか? 国鉄時代は多くの線区で特急と共に、あるいは急行のみで走っていたのですが、JRに代わり時代が進むに連れて、急行列車の新設はなく、逆に廃止される一方です。現在では数えるほどしか走っていませんし、昼行の急行に関しては、臨時列車を残して全滅してしまいました。JR九州と四国管内では一本も走っていません。四国や九州では、急行だった列車が特急に置き換わるケースが多いようです。
 では、どうして急行だけがここまで減少してしまったんでしょうか? 夜行列車が消滅しつつあることとも関連はありますが、それ以上に「急行」そのものの存在価値が低下していることが原因では無いでしょうか? どのようにして存在価値が低下していったのかを以下に書いていきたいと思います。

  • 車両の老巧化とコストの問題

 これは寝台列車のエントリと被るので端折りますが、要は特急よりも料金が安い=お金をかけにくいのであって、特急のような新造がしにくいのはあると思います。特急のように、一日に何往復もしている列車もありませんから、急行用の列車を新たには作りにくい事情もあるんじゃないかと思います。
 

  • 実質的な料金の値上げ? 急行→特急化

 これは、特急料金と急行料金の差異もあるんですが、急行が特急に置き換わるケースが多いと言うことは、実質的には値上げですよね。特急料金は、繁忙期や閑散期、通常時など細かく料金が指定されていて、例えばA特急料金では200kmまでだと2810〜2410円、400キロまでだと(指定席)となるんですが、急行料金は200kmまで1050円、200km以上だと1260円で据え置きです。指定席券が300〜510円かかりますが、長距離なら圧倒的に急行のほうが安いのです。
 ただし、ただ「値上げ」しているわけではありません。JR四国で言えば、徳島線では元々特急の設定はなく、急行「よしの川」が走っているだけでしたが、それが特急「剣山」に置き換わりました。停車駅も大きくは変わってませんので、これだけ考えると値上げ……に見えるんですが、本数が増発され、また車両がJR四国の特急列車と同じものになったために、サービスは向上してるんですよね。以前の「よしの川」は一度乗りましたが、産業遺産みたいな列車で(たぶん旧国鉄時代の)、窓もしっかり閉まらないのでディーゼルの排ガスが車内まで入るし、揺れは酷いしですごかったです。たまに乗るような人間にはそれで良いんですが、日々利用する沿線の乗客からすれば、車両の更新はかなりプラスだったんじゃないかと思います。が、結果的に急行の廃止が進んだ原因にもなってるとは思います。
 また、急行を廃止したJR九州では、競合する西鉄高速バスとの価格競争もあって、近距離の特急料金を実質値下げしています。なので、急行廃止は、特急料金との差異が少なくなってきて「急行料金」の存在価値が薄れてしまったため、と言うことでもあるのかもしれません。

 例えば夜行列車では一時期、快速ムーンライトが各地で走っていましたが、あれもかなり影響したのでは無いかと思います。急行料金+寝台・あるいは指定席料金となる夜行急行列車より、指定席券orグリーン席券で乗車出来る快速夜行列車の魅力は大きかったのでは無かったのかと思います。全車グリーン車指定席の列車だと確か乗れないんですが、青春18きっぷが使用できるのも大きかったのでは無いでしょうか? ムーンライトと競合してた急行はほとんど無かったかもしれませんが、長距離旅行をするのに青春18きっぷを使う人が増えた一方で、このような急行夜行列車が選択肢からはずれると言うことは無かったでしょうか?
 また、昼行の快速・新快速列車が各地に増えたこともあるでしょうね。これは特急への置き換えと異なり、完全なJRのサービス向上でしかありませんからね。車両は急行で使っているものよりも新しい場合が多いですし、スピードも、停車駅の多少はあるにしても変わらないことが多いです。JR西日本管内だと、新快速が特急はまかぜよりも高速で運転してたりするので(追い抜かれないように、はまかぜの停車駅を減らしたりダイヤを調整して新快速には抜かれないようにしてますが)、さらに旧型だった急行を運転できないことにもなるんですよね……。
 それだけではなく、無料で急行よりも早い列車が運行されてるのに、わざわざ別料金が必要な急行がいる意味はほとんど無いですよね。良い例が津山線の急行つやまです。かつてはグリーン車のついた列車だったんですが、途中からグリーン車は連結されなくなり、そもそも急行つやまと並行して走っている快速ことぶきは、本数が多い上に急行つやまとほぼ同じ所要時間なんですよね。なので、急行の存在意義が薄れて廃止されてしまった……となったんでしょう。わざわざ、有料の急行に乗ろうと言う地元の人は少なかったでしょうしね。

 急行料金は前述の通り、そう高くはありませんが、特急料金と同じく距離制です。となれば、区間ごとに急行券もチェックしなければならないわけです。かなりの手間なんじゃないでしょうか? 特急ではそれをやっているわけですが……。
 そして、逆に浸透して行ったのは、通勤ライナーなどの整理券式の列車でした。
 本当なら、特急では無いけど有料の列車であるなら、急行で良いはずです。ですが、整理券方式で固定の料金で運行されているのが現実です。
 推測ですが、距離制の急行料金と言うのが時代にそぐわなくなってきているのかな、と思います。50kmまで530円、100kmまで730円と、310円のケースが多い通勤ライナーよりも割高なケースが多いのは確かですが、距離制ではなく固定料金なほうが都合が良いということなのでしょう。距離制だと、ちゃんと料金を徴収するには、乗客の乗車・下車駅も細かく見なければなりませんし、通勤時間帯にそのような人員を割くのも難しいでしょうし、きっぷを買う時の手間もかかります。固定料金であれば、発行の手間も検札の手間も減らせます。
 そうなると、特急は特急で残っているわけですが、それとは別に快速・新快速・特別快速があり、その間のような形で有料の通勤ライナーが走っている……。通勤ライナーは、JR東海であれば特急の車両を使っているので、短距離の特急みたいなものなんですよね。で、ここに急行が入り込む余地はあるでしょうか?


 色々と書いてみましたが、急行が絶滅する理由は、やはりその中途半端な存在意義によるところが大きいんじゃないでしょうか?
 それよりも、「急行」という存在が、「国鉄時代の象徴的なもの」「国鉄時代の遺産」のような気がします。なので急行が無くなるときに、JRは真の意味で国鉄と決別するときなのかもしれません。


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