原作読者視点で観た、「ゆるゆり」1話の構成と雑感

 関西でもようやく「ゆるゆり」1話が放送されましてニヤニヤしながら観てましたが予想以上に面白くて満足の出来でした。あと、原作序盤ってこういうノリだったよなあ(最近もさほど変わりませんが)とも感じて懐かしかったです。
 原作読者は、雑誌「百合姫」自体がさほどメジャーな存在でもないですし、原作そのものもメジャーとは言いがたいのでアニメで知ったという方が多いような気がしますが、そういう人たちにはどう映ったのかは僕にはわかりません。ので、原作読者かつアニオタとしての目線から観たアニメ「ゆるゆり」1話の感想みたいなものを書きたいと思います。

  • 主要キャラの登場のさせ方と1話での扱い方

 個人的に好印象だったのが、主要キャラの登場のさせ方と扱い方です。一つの見所というか懸念が、主要キャラをどう登場させるかとさせないかだったんですが、ここは絶妙なバランスだったと思ってます。製作委員会名が「七森中ごらく部」だったように、中心メンバーの4人が所属(?)するごらく部が原作でも中心として描かれてはいるんですが、もう1つのグループである生徒会メンバーも序盤から原作ではかなり出ていて、さほどごらく部とは関わりのないエピソードも多く描かれていたんですよね。アニメにするときに、原作と同じく生徒会メンバー単体、しかも副会長の綾乃と千歳(あかりの重大発表の時に飛び込んできたふたり)、次期副会長を狙う櫻子と向日葵(あかりのクラスメイトでバチバチやってたふたり)ではまた違う世界でエピソードが描かれていたりしたんですが、アニメではまずはごらく部と関わりのない部分でのエピソードは描かれませんでしたよね。あくまでも主人公であるあかりを中心とした描かれ方でしたので。特に櫻子と向日葵については、あかりを中心として描くことでクラスメイトにいるモブキャラの扱いで、目立つもののあくまでごらく部と薄くとも繋がりのある状態を描くことが出来ていたのが良かったんじゃないかと思うわけです。また、櫻子と向日葵はあんな感じでケンカばかりしているわけですが、あれもモブキャラの状態でもデフォであることを描いたことで、2話以降で生徒会の話になっても自然に入れるようにはしていたなあと思うので、その点も上手かったなあと思いました。
 そして、あくまでも1話ではごらく部4人が中心であることも描けていたのが良かったと思います。あくまでもゆるゆりの中心はあの4人であり、4人と関わりを持つキャラクターたちを巻き込んでキャッキャウフフ展開(?)になることが面白さの本質だとも思うので、そこもよく描けていたんじゃないかと思いました。とにかくこの4人の関係性や立ち位置を視聴者に見せないといけないわけで、その意味でもほぼ4人だけを描いたことには意味があると思います。
 ちょっと早いかなーと思ったのが、ごらく部4人目のメンバーであるちなつちゃんの登場タイミングです。Aパートで描かれていたように、あかり・京子・結衣の3人が幼なじみで、ちなつはそこに入り込んできたという感じなのですが、3人だけでのエピソードをもうちょい描いていても良かったのかな……という気がしています。原作では1巻の途中くらいからの登場なんですよね。しかし、このゆるゆりはこの4人が中心のお話であるという印象付けをするためにはこの早さがいいのかもしれませんね。

  • あかり空気化は早すぎ?

 「ゆるゆり」の特徴のひとつに、主人公であるはずのあかりが空気化してしまうというものがあります。最近の原作単行本では、表紙に描かれているはずなのに帯があると全く見えなくなるといういじめに近い扱いを受けていますが、原作1巻くらいでは確か普通に主人公していたのが、2巻くらいに入るともはや主人公は京子でしかなくなり、そういうエピソードも描かれるようになっていきますが、原作を読んでいた身からすれば「徐々に」なんですよね。最初は3人の中に入っていったちなつちゃんが遠慮がちだったこともあるのかもしれませんが、そのちなつちゃんがどんどんキャラ立ちしていくのとは逆にあかりの存在感がなくなっていったので、それを1話でいきなりやられても……と感じました。ちなみに「めだちたgirl」の箱は原作では2巻途中のエピソードとかなり遅めだったりします。
 ただし、どちらにしてもあかりの無個性さとスペックの低さはなかなかに際立っているので、1話からこの感じで行くぞ!と示したのは今後のエピソードを描いていく上では方向付けとしては正しいのかもしれませんね。ちなみに、あかりの間の抜けたエピソードとして描かれた自己紹介の件ですが、あれはアニメオリジナルなんですよね。というかあかりのクラス(1年生)が描かれたことも序盤では全く記憶にないのですが、あかりの特徴やちなつをすんなりとごらく部に溶けこませたこと、向日葵や櫻子との繋がりも意識させることが出来たと思うので、非常にいいオリジナルエピソードだったと思います。
 ただ誤算は、あかりの声が結構アホ可愛かったことですね……。もう少し平凡な声だと心も痛まないのに……w しっかりほのぼの百合アニメの主人公の声してましたよねw

  • 動いて可愛かった

 もう一つの懸念材料として、ゆるゆり原作がさほど動きで見せるタイプの作品ではなく、アニメ映えしないのでは……? と感じていたことですが、これも杞憂に終わりましたね。京子のオーバーアクションとかあかりのおだんごが飛ぶ感じ、ちなつちゃんのボリューミーな髪の毛など、思ってた以上にアニメで描いてこその可愛さや面白さに繋がっているように思いました。京子が結衣のスカートをめくったり自分のスカートをめくったりするあたりとかも、前後の動きから自然に流れでやってる感じで、漫画のコマが進んだのとは違う感じになっていたように思いました。ついに喋って動いたミラクるんとか、スカートの裾が結構際どかったりとか、原作にはないちょっとしたエロさもあったりしてて、アニメってすごいなーと思ってしまいました。

  • 今後の期待と不安

 不安から先に挙げると、1話で結構詰め込んできたので、1クールとは言え中盤や後半にネタ切れや薄くなる回が出てこないかな……という懸念はあります。が、原作がもの凄いハイペースで進んでいることもあって、1クールアニメとしては十分な原作量があるので大丈夫なのかなーとも思ってます。
 期待としては、あかりが空気という明確な方向付けをしたことで、他のキャラのエピソードは描きやすくなったかもしれませんw それに、「ゆるゆり」という作品は主にカップリング萌えメインで描かれているので、例えば「Aチャンネル」あたりよりもその辺をハッキリと、でもゆるく描いていくことになると思います。ガチ百合はちょっと……という方もいるかもしれませんが、そこまでハッキリしたものでは特にないとも思いますが、スキンシップは多めなのでニヤニヤ出来る展開が数多く待ち受けていることでしょう。あとは、次回予告でやたら揺れていた向日葵のおっぱい具合とか、水着回もありますし、結衣の家訪問回とかもあるでしょうから楽しみですね。作画としても水準以上だったので、タッチが変わったとしても変に崩れなければあまり問題にはならない気がします。ゆるーく待ちたいですね。

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 原作からアニメに入った作品は、個人的には「アマガミ」以来久々だったわけですが、アニメから入るのとはまた受け取り方が違いますし、個人的な注目点をクリアしててかつアニメになっての効果が大きいのがわかるってのはこんなに楽しいことなんですねえ……。今までは減点法みたいな感じでしか観れなかったので損をしてると思いましたが、「ゆるゆり」に関してはその辺のバランスは上手く取られているので、作品の方向性そのものが合わないケースを除けば、原作既読者だけでなくアニメから入る人をも楽しませられる感じになっているようにも思いました。
 原作もアニメも面白かった割にはアニメは売れなかった「みつどもえ」の監督さんとシリーズ構成というタッグでの心配もあったのですが、あちらは導入部をややミスった感じがあった感じがしてて、むしろ内容としては非常に楽しめたことを考えると、こうやって導入部が上手く行きさえすれば最後まで面白いまま進みそうですから安心感すら感じますね。
 期待してなかった作品が期待以上に面白いケースもいいのですが、こうやって期待してた作品が期待以上に面白いケースがやはり良いですね。1クール楽しませていただきます。

【参考】
「ゆるゆりアニメ化に対する期待と不安」(過去記事です)