ガールズ&パンツァーBDの品薄ぶりに観るバンダイビジュアルとアニプレックスのBD販売戦略と手法

 ガールズ&パンツァーのBD1巻が順調に積んで2万枚まで届くところまで来たようです。amazonでの状況を見る限り、初回出荷が12月中旬くらいで締め切られ、その後はちょくちょく入荷が続いているようですが、1月30日頃発送予定となった後からは注文すら出来なくなっていました。なのでもう初回版は生産されないのかもしれませんが(※1月18日現在amazonでの注文が可能になっています。定価ですしどのくらいの数量があるのかわかりませんが)、まだまだ需要は満たしきっていないようですし、3月末の最終回放送後にも更に需要が発生しそうなので再生産しないのかなと思ってます。
 正直なところ、バンダイビジュアルのBDの売り方はあまり上手くないと思ってます。というのも、同じように発売直後にBDが品薄になったのがこのガルパンが最初ではないし何度かやっているからです。その前が「黒子のバスケ」でしたし何より「TIGER&BUNNY」を思い出させます。逆にアニプレックスバンダイビジュアルよりももっと売れる「覇権アニメ」と呼ばれる作品を定期的にリリースしているわけですが、そこまで品薄状態になった万を超える売上の作品は無いような気がします(化物語くらい?)。バンダイビジュアルはいって2万を超える程度の売上なのですが、アニプレは平気で3万4万と売上が出てしまいます。が、バンダイビジュアルは品薄を起こしアニプレはどんどん出荷をしていく……。これには、やはり作品内容の問題以上に売り方の問題が大きいように感じてしまいます。
 そこで今回は、バンダイビジュアルアニプレックスの売り方の違いを簡単に観て行きたいと思います。

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 まず、ガルパンBDの内容を観て行きましょう。収納BOXに分厚いブックレット2種、トランプなどとにかく封入特典が多いように思います。BDへの映像や音声の特典はプレスすれば良いだけでそれほど手間はありませんが、紙媒体とはいえ印刷物がこれだけ多いとそれだけで再版するにも手間がかかります。また全巻収納BOXの特典もかなりの手間かもしれません。BOX特典は1巻につける理由はBOXがあるならマラソン完走しようという気にさせるからだとは思うのですが、逆に発売までまだ遠い段階である程度の数字を決めてしまわなければならないわけで、そういうリスクが存在します。また、もし大量に作って売れ残ってしまった場合には、お金的な意味と、BOX分のスペースを大幅に作らなければなりません。なので最初の数字を決める時に慎重になるのだと思いますし売る機会損失が発生しやすくなるのだろうと思っています。
 同じくアニメ放送中にぐんぐん人気が上がっていきBD/DVDもどんどん売れそうな感じになってきて若干の品薄状態になった黒子のバスケですが、結果的にはそこまでの状態にはならず生産終了も無かったようです。ガルパンとの違いは、封入特典が普通のブックレットだけだったからだろうと思います。こういうシンプルな仕様にしておけば需要がまだある状態での生産終了もないのでしょう。
 ただTIGER&BUNNYの時は、2クールものなのに発売日が早く、また製作側が爆発する人気に対応できなかったこともあり初回版が壊滅的な状態になり、再版もそれほど行われず初回版は幻くらいにもなってしまいました。そんなタイバニの仕様ですが、通常版では無い桂正和描きおろしブックケースにブックレット、そしてドラマCDと……これくらいなら再版すれば良いのにって思いますが(ドラマCDは後に対応したんでしたっけ?)、それでも面倒がってか売れ残りを恐れたのか再生産はされませんでした。そういえばタイバニもガルパンも、女性向け/男性向けで違いますが同じくバンダイビジュアルが手がけたオリジナルアニメという共通点がありましたね……。
 アニプレックスのBDの売り方はどうでしょうか? あの魔法少女まどか☆マギカでは、震災もあってBD発売が遅れたということはありましたが、特典はCDのみ、ブックレットも1種類とかなりシンプルでした。まあまどマギレベルの大ヒットだと余計な特典など付けなくても売れることはわかっていたからなんでしょうけど。アニプレックスのBDはデジパック仕様にクリアケースというのがほぼ共通化されていて、中にはそれ以外のものをつけたりしているものもあるみたいですが(最近買ってないのでよくわからなかったり)、基本的にはシンプルです。なので覇権アニメというレベルで売れる作品にまでなると、追加生産しやすいような仕様になっているのだろうとは思ってます。もちろん大人気につき追加特典という形で1〜3巻連動購入特典でもらえる座談会CDを付けるなどお客様へのサービスも忘れていないあたりがアニプレの上手いところでした。
 このように、既にBDの仕様からして違うわけですが、バンダイビジュアルがオリジナルアニメのBD1巻の特典を何故こんなにモリモリにしてしまうのかと言えば、それは「売れるかどうかわからないからとりあえず豪華にして売ろう」という姿勢にあるものと思ってます。とにかくバンダイビジュアルは下手な鉄砲も数打ちゃ当たる的な企画が多い。当たれば2万前後という作品もある一方で数字が出ないレベルで売れない作品も多く存在します。そんな中でのオリジナルアニメですから、売れるのかどうか疑心暗鬼になるのもまあ無理はないという考えもできます。タイバニも売れるアニメになるという確信は無かったというインタビューを観たことがありますし、恐らくはガルパンもそうだったのでしょう。ガルパンは観れば良いアニメだと感じるでしょうけど、放送前の評判を思い出す限りはかなり厳しそうな感じがありましたし、何より水島努監督作品の数字を観ると万超えしたアニメは「おお振り」まで遡らないといけないくらいに大ヒットには遠い監督さんでもありました。そんなベテランでもある水島努監督の初のオリジナルアニメでもありますから未知数にも程があるレベルだったでしょう。
 とは言え、アニプレックスだったらここまで機会損失することはありませんし、バンダイビジュアルが何で再版しないのかが不思議に見えるかもしれません。ただ、両者に売上の目標的な意味での思惑の違いがあるとしたらどうでしょうか。
 アニプレックスはある意味、売れるのであればいくらでも売りたい体制ではないかと思ってます。それ故に売れそうな作品の1巻を作れる体制にしているのだろうと思ってます。が、バンダイビジュアルはそうではなく、ある一定の数が売れればそれで目標達成なのかなと考えているような気がします。ま、バンダイビジュアルにとってテレビアニメのBD売上が占める会社全体の利益が限定されているのかもしれませんね。
 また、アニプレバンダイビジュアルでは発売前の売上予測の精度があまりにも違うような気がしています。アニプレは発売前の予測の精度が高くて、BD発売時に需要に対して供給が大幅に足りないってケースがほとんどありません。が、バンダイビジュアルはそこが読めないことが多いように思います。アニプレにはamazonあたりの動きでの需要予測システムか何かが確立しているような気がするくらいには凄い読みをしていますし、発売1ヶ月前には数字がだいたい見えているのだろうという感じなのでしょう。バンダイビジュアルにもそこまで読めるようになれば需要とのギャップがここまで出るような作品も出なくなるような気もするんですが……。

 ガルパンBD2巻の数字で全貌が明らかになりますかね。。