有力アニメ制作会社とのパイプが弱まったアニプレックスの手詰まり感

 ニセコイを観ながら真顔になっている今日このごろですが皆さんいかがお過ごしでしょうか。
 いきなりdisっていて申し訳ないのですが、アニプレックスのアニメが本格的に伸び悩んでいます。前述のニセコイは新房監督・シャフト制作ということで話題にはなりましたが、今のところあまり売れそうな雰囲気がありませんし、話題性としても今ひとつな印象です。また以前に取り上げた『世界征服〜謀略のズヴィズダー〜』に関しては、物議を醸すような話数もあり完全に失速してしまった感じがあります。前期から続く作品も『キルラキル』に関しては一定以上の売り上げだったものの『サムライフラメンコ』は500枚にも届かないような悲惨な数字になりましたし、『銀の匙』2期も1期があまり売れておらず大幅に伸びることも考えにくいとなると厳しい状況ですし『マギ』2期もイベチケを付けて何とか売り上げが維持できたというレベルにまで1期の1巻から下がっておりこちらもキツい状況になってきているように思います。何より2013年にオリジナルアニメでサムライフラメンコを含め3本の1巻の売り上げが1000枚に届かないアニメを製作するなどかなり悲惨な状況になりつつあります。2013年は若干TVアニメのBD/DVDが全体的に売れにくかったような印象もありますが、箸にも棒にもかからないようなオリジナルアニメを多く出してしまったあたりで翳りが見えてきたのは事実かと思います。
 たまたま2013年は企画のエアポケットに入ったような不作の年で、2014年はまた強かった頃のアニプレが戻ってくる、となるかと思いきや今期も弱含みのままと状況が改善されてきてません。来期には『魔法科高校の劣等生』や『メカクシティアクターズ』といった原作ファンが既に多いアニメがありますし巻き返しは必至かとも思うわけですが、一方で深夜アニメ業界を取り巻く状況が変わってきており、それがアニプレの状況を非常に悪化されているようにも感じています。アイマス劇場版が大ヒットしてはいますが、かなり先行きは不透明な状況が見えてきました。

  • 大手制作会社とのパイプが弱まった

 アニプレックスといえば子会社に制作会社として有名な「A-1Pictures」を持っています。近年ではそのA-1制作のアニメが増えてきていて、ここ最近でも、劇場版あの花やアイマス宇宙兄弟、俺妹2期(1期はAIC)、ガリレイドンナ銀の匙サーバント×サービス、世界征服、マギ、龍ヶ嬢七々々の埋蔵金など、公式HPの「放送中」となっている作品のところで紹介されているうち3分の1を占めるまでになっています。これはアニプレックスが自由に使うことが出来るA-1に重点的にシフトすることで、企画から制作までの流れを一貫したものにするだけではなく、アニメがヒットした際に権利や儲けを総取りしてしまえる体制という見方も出来るかと思います。そのこと自体はビジネスモデルの一つでもあり企業努力の結果作り上げられたものなので批判するようなことでもないですし、実際にA-1制作でヒットしたアニメはおお振りとかあの花、アイマスなど多数あり成功したかにも思えました。ただここ最近はどうでしょう。さきほど紹介した作品でシリーズ物以外にヒットが全く出ていないんですよね。それどころか結構悲惨な数字になってしまっているようにも感じます。さきほど紹介したところにはなかった作品ではビビオペなんかは売れてましたけど、俺修羅などは1巻の数字だけが高いイベント型の推移でしたし、アニプレではなくキングレコードが製作のうたプリシリーズの売上が目立つ結果になっています。SAOの2期もありますから悲観することでもないのですが、やや行き詰まりを感じてしまいます。
 ただ、そもそもアニプレ作品にA-1制作アニメが占める割合が増えているように感じるのは何故でしょうか? 例えば、先日ソシャゲメーカーから半ば切り捨てられるように独立したAICは俺妹1期やP4などアニプレックスとの繋がりの深いメーカーでヒット作もそれなりには出していました。しかしながらここ最近は俺妹2期の制作からは外され、オリジナルの幻影ヲ駆ケル太陽などが大コケするなど振るわず、角川書店が関係していると言われるプロダクションアイムスという新たな制作会社に主なスタッフが移籍したと言われています。現在残っているAICにはあまりクリエイターは残っていない恐れもあります。岸誠二監督とよくアニメを作っているAIC ASTAのほうはどうなっているのかわかりませんが、これまでほど頻繁にアニメを作れる体制では無くなったと観るのが妥当でしょう。
 ハガレンシリーズやスタドラなど大型作品でタッグを組んでいたボンズですが、絶園のテンペストを最後にアニプレックスとの作品が途絶えています。一時的なことかと思っていたのですが、今期のノラガミと、来期にあるスタドラスタッフが放つオリジナルアニメであるキャプテンアースがavex製作ということになっていて、どうにもアニプレックスとは離れてしまったようなのです。ボンズは元々はサンライズから分かれた制作会社でもあり、そのサンライズの上にいるバンダイビジュアルとも関係が深いのですが、そのバンダイビジュアル製作では今期のスペース☆ダンディがあり関係を継続していることからしても余計にアニプレックスから離れたような印象を受けます。そして調べてみたところ、アニプレックスに元はいた大山良さんというプロデューサーがavexに移籍したらしいということがわかりました。大山Pは主にボンズサンライズアニプレックスが作るアニメでプロデューサーとして関わっていたようですが、ロボノを最後にプロデューサーとしてクレジットされることが途絶えていたようです。が、今期のノラガミでクレジットされていたので、avexが実績あるプロデューサーを本格的にアニメに参入するために引きぬいたかヘッドハンティングしたかというところなのだろうと思います。これがキッカケなのかアニプレックスボンズとのラインが途絶えたのだとするとかなり大きな痛手になるのではないかと思います。アニプレックスボンズのアニメは絶園のテンペストもですが、NO.6やUN-GOなど全体的に売上が振るわない作品が続いていたようなところはありました。だからと言ってアニプレックスボンズとのラインを切るというのは考えづらいくらいに素晴らしい作品を作れるスタジオでもありますから、ここをごっそりavexに持って行かれたとしたら損失は計り知れないものがあります。
 その他の有力な制作会社で言えば、BLOODシリーズやギルクラなどでタッグを組んでいたProduction I.G.ともロボティクス・ノーツを最後に作品が途絶えています。そしてアニプレックス以外との製作タッグで黒子のバスケ進撃の巨人WIT STUDIO制作ですがIGが全面的にバックアップしていた)といった大ヒットアニメや、それなりにヒットしたサイコパスガルガンティアなど非常に活発にアニメを送り出しています。そんなIGですが、ここもバンダイビジュアルとの関係がここのところ密だったように感じますが、サイコパスなどノイタミナ時代から繋がりがある東宝製作で4月からハイキューをスタートさせるなど、アニプレックス以外の製作との関係を重視しているように見えます。しかもこのハイキューは日曜5時の全国放送枠ということもあり気合が入るはずですが、ここしばらくアニプレックスバンダイビジュアルで分けあってきた枠でもあり、ここに東宝が入るあたりに何かしら変化が起こっていることが感じられますが、IGとそれをやるというあたりで安定した企画の供給元としてもやっていこうとしているように感じます。それと同時にアニプレックスの影響力低下も起きているようにも感じます。
 大手制作会社と言えば、J.C.STAFFとの関係も続いていません。とは言えそもそもおとめ妖怪ざくろと君と僕くらいしか直接の繋がりはないのですが、元々はフジテレビを介してハチミツとクローバーのだめカンタービレあたりのアニメでの繋がりだったようなのですが、ここも2013年には作品がゼロとなり関係は途切れたように見えます。JCの場合は元々ポニーキャニオンジェネオンスターチャイルドとの関係が強かったわけすが、ここのところはジェネオンからプロデューサーが移籍したワーナーにメディアファクトリー、そしてウィッチクラフトワークスでは久々にタッグを組んだというバンダイビジュアルとのラインがあるのでアニプレックスからの仕事はあってもなくても大丈夫そうな状況になっているようです。
 繋がりのあるところでは、ヴァルヴレイヴなど関係を強化しているように見えるサンライズですが、そもそもバンダイビジュアルの傘下でもありどちらかと言えばバンダイビジュアル製作のアニメを優先するでしょう。また今度魔法科高校の劣等生を制作するのはマッドハウスとのことなのですが、ここも日テレ傘下ということもありアニプレックスが自由に使えるような制作ではありません。
 空の境界Fate/Zeroなど大型作品に強いufotableなどはほぼアニプレックス専属の制作会社として有力ではありますが、基本的には大型作品ばかりを任される傾向が強く、おいそれと1クールアニメを持っていける制作にはなっていませんし、1年フルに放送されるようなアニメを作るようなところでもなく、本数を作る制作会社にはなっていません。そう考えていくと、アニプレックスとの関係が強くまた実績もあり本数も作れる制作会社はA-1の他には、シャフトしかない、ということになってきています。
 シャフトは電波女と青春男以降、他の製作会社と組むことをしなくなり実質アニプレックス専属となりました。アニプレックスとシャフトでは、まどか☆マギカ物語シリーズひだまりスケッチと人気シリーズを3作品も持っておりこの3つのコンテンツを順繰りに回していけばそれなりにやっていけそうな雰囲気もありますが、もちろん3シリーズだけでは持ちませんし、新たにシリーズ物として続けていけそうな作品を手がけていかねばならないわけで、シリーズ物以外にささみさん@や現在放送中のニセコイなどをやってますがこれが芳しくありません。ささみさんは掴みどころのないままで終わった印象がありますし、ニセコイも今のところあまり売れそうにもない状況です。次のメカクシティアクターズがどうなるかわかりませんが、特殊な作品なだけにどうなるか全くわかりません。また、以前はスタチャやMF、ポニキャの企画でもアニメを作っていたので、それらと比較するとバリエーションの減少は否めないでしょう。頻繁に見かけるテンプレ的な演出も一部で言われており、基本的には新房昭之監督が手がけるということもあり、バラエティに富んだアニメを作っていけるのかどうかと言ったところがあるように思います。
 このようにアニプレックスとしては、何本もラインを持っていたり常時アニメを放送できる制作会社のバリエーションがほとんどない状態となってしまってます。同じクールに同時に5本制作出来る会社がどれだけあるでしょうか。もちろんA-1やシャフトでも色んなアニメを作れるとは思うのですが、進撃の巨人だとかスペース☆ダンディあたりをA-1やシャフトで作れと言われてもまず無理でしょう。そういう作品を企画しても実現までなかなか行けない状況も生まれると、オファーしても原作側から断られたりそもそも企画が立たなかったりもしてくるのかもしれません。

  • 実力ある制作会社とのパイプが切れた?

 アニプレックスといえば現在でもufotableのような力のある独立系の制作会社との繋がりもありますが、そうした制作会社との関係が持続していないという状況もあります。
 例えばAngel Beats!を作ったP.A.WORKSとはそれっきりの関係性になっています。PA史上では最も売れましたし、アニプレックスとしてもライブツアーやイベントを開催するなど非常に成功した作品となり、普通ならここからまた次のアニメが生まれるはず……だったのが4年経っても音沙汰すら無いということで関係は切れたと断定しても良いのでしょう。その後のPAは、ポニキャや角川、ジェネオンなど多彩な製作会社と組んでいますが、売れても売れなくてもその仕事ぶりは業界内でも評判でしょうからアニプレックスからの企画がなくともやっていけるのだろうと推察できます。
 妖狐×僕SSを作ったdavid productionとの関係もそれっきりになっています。妖狐×僕SSはなかなか売れた上に原作2巻くらいまでだけをストックに1クールアニメを作ったということもあり2期待望論が出てきてはいましたが、2年が経つ今もまだ特に発表がありません。これは、原作が3巻以降面白さの質が大きく変化してしまう、というもので気安く売れたから2期とはいかなかった、なんてことが当時言われていましたが、どうにもそういう事情ではなくなってきているように感じます。こちらはPAとは事情が異なると思いますが、妖狐×僕SSの後にワーナーとジョジョの奇妙な冒険のアニメに挑戦して注目を集めました。そしてフロンティアワークスなどと超次元ゲイムネプテューヌのアニメを挟んだ後に再びジョジョで最も有名な3章のアニメに挑戦する流れになっています。ここの場合は、妖狐×僕SSでいざこざがあってその後にアニプレックスと繋がりが切れてしまった、と言うよりもむしろワーナーがジョジョのアニメを作り続けてもらうために先に押さえたようなイメージが有ります。恐らくは何本ものアニメの制作を同時進行は出来ないでしょうし、ジョジョの内容からするとそれに掛かりっきりにならないと良いものは出来ないはずです。そう考えると、他のアニメを合間にやれる状態ではないような気がしています。ネプテューヌはそれ以前に受注していた案件なのだろうと観ています。
 刀語を作ったWHITE FOXともそれっきりになっています。3年先くらいまでの予定が埋まっているという大人気の制作会社となっていますが、刀語の後はフロンティアワークスなどと作って大ヒットしたシュタインズ・ゲートジェネオンと作ったヨルムンガンド、ポニキャと作った(ている)はたらく魔王さま!そにアニ、そして来期には再びジェネオン(現在はNBC)と組んでご注文はうさぎですか?の制作が決まっています。ここの場合はよくわかりませんが、前述のPAと同じく色んな製作と組んで面白くあるいは制作会社として糧になるようなアニメを貪欲に取ってきており、その過程でアニプレックス以外の製作とのアニメが増えているのかな、と観ています。昨年、ノイタミナの枠を埋めるために刀語を1時間ぶち抜きで再放送していたので、関係は切れてはいないとは見ているのですがそれでももう4年が経過しようとしています。とにかく貪欲に色んなジャンルに挑戦する会社なので、アニプレックスがここのやりたい企画を提示出来れば実現はしそうではあるのですが……なかなかそういっていないような雰囲気があります。
 このように、小規模ながら力のある制作会社との繋がりが途絶えていることが多いのも今のアニプレックスの気になるところであり、今後もどうなるのかわからない不透明さを感じる部分でもあります。

 昨年、ノイタミナ枠で刀語の再放送を1時間やることになり話題になりました。そして映画をやるという名目はあったものの総集編ということもあり疑問にも思ったあの花の再放送で1枠分埋めるということもありました。明らかにノイタミナ枠へのアニメの供給が滞ったことを示していました。
 ノイタミナ枠は1本だったり2本だったりしていたようですが、最近は常時2本を放送するのが当たり前になりました。以前は東宝枠とアニプレックス枠というふうに分かれていたものが、東宝が本格的にテレビアニメ製作に参入することになりノイタミナ枠を離脱し、そこからはアニプレックスが1社でノイタミナの2枠を埋めることになりました。するといきなり刀語の1時間放送と次のクールでのあの花再放送となるなど、あからさまに枠を埋めるのに苦労し始めるようになりました。東宝ノイタミナ離脱は突然のことだったのかどうかよくわからないのですが、フジテレビ側のアニメの2枠維持の方針をアニプレックス側が飲み何とか対応しているようにも見えます。ただ問題は、このノイタミナ枠の地位低下が起きているのではないかということです。
 ギルクラ以後でヒットしたといえばサイコパスくらいのものですしどちらもIG制作です。テルマエ・ロマエはアニメ以上に実写映画の話題ばかりになりましたし、実写との連動でも映画化される銀の匙くらいで閉じた状態が続いています。そしてオリジナルアニメでガリレイドンナサムライフラメンコが記録的な売れなささともなりジリ貧状態に陥っています。来期にはライトノベル原作と以前のノイタミナでは通らなかったような企画が放送されるようにもなり(内容的にはノイタミナ向きなのかもしれませんが)、枠そのものの特性を維持する以上に枠の存続を最優先しているようにも見えてしまいます。
 枠の維持を優先したいのに出来ないジレンマも出てきます。前述のIGやBONESなどとの関係が持続できていない事情です。特にIGはノイタミナ枠での重要な制作会社でもありましたし特殊なアニメも作れるところでもありますから、こことアニメが作れないのは非常に痛いはずです。もちろん完全に切れたかどうかはわかりませんし、2期が発表されたサイコパスがまたノイタミナに戻ってくることも考えられますから希望はあるのですが、このまま今のアニプレックスだけでノイタミナの2枠を維持していくには、前述のような本数を作るのがしんどい体制のようですから辛いのではないかと思います。
 また、アニプレックスは東京MXの土曜23時30分や24時00分の枠やMBS/TBSのアニメイズム枠に主力級のアニメを放送しているので、ノイタミナ枠だけ特別な企画をやれないことになってしまってるのだとすると、単純に前述の枠からあふれた4,5番手のアニメをやるだけとなってしまい、それこそ枠の価値がどんどん下げてしまいかねません。

                  • -

 色々と書いていきましたが、どの問題も全て繋がっているように感じますし、アニプレックスの企画が相当しんどくなってるのは明白ではないかとも思います。この状態が本当であれば、東宝avex、ワーナーあたりが有力な制作会社を囲い込んでしまっていることも誘因となっている気がしますが、逆に全部自分のところの儲けにしてしまうアニプレックスのやり方に対抗する形で他社が包囲網みたいなものを敷いたような印象も出てきてしまいます。
 企画の進め方に反発する形で離れたのか、あるいは売れない責任を押し付けて離れたのか、それとも今がたまたま離れている状態なだけなのかはわかりませんが、この状態が続くようだとアニプレックスは相当ヤバくなるかもしれません。またアニプレックス以外の既存の製作もうかうかしてられない状況になりつつあるとも思いますが。
【関連】
今年のアニプレックスのテレビアニメが本格的にヤバい件(昨年の記事)