アニプレ作品で坂本真綾さんが歌う!「世界征服」でアニプレックスとフライングドッグが組んだ理由を考えてみた

 「世界征服」観てますが、ヴィニエイラ様の非常に幼女幼女した感じが予想以上にたまらない感じで楽しいです。「のんのんびより」や「未確認で進行形」などでも幼女キャラが活躍していますが、インパクトで言えば間違いなく一番だと思います。
 しかし内容はさておき、一番ビックリしたのが、主題歌がOPを坂本真綾さんがEDが悠木碧さんということで、アニプレックスの作品でフライングドッグの主題歌が来た、ということでした。というのも、この両者がタッグを組んでアニメを作った記憶があまりなく、意外な組み合わせだなあと思ってました。実際に放送されてみると良い感じの曲でこのタッグは上手く行ったと思いましたが、ならなぜ今までタッグを組んでこなかったのか、そして今回なぜタッグが結成されたのか、というのが意外に思えてきました。今回はその辺のことについて想像を含めながら書いていきたいと思います。
 坂本真綾さんは声優としての活動もしながら本格的なアーティストとしての活動も並行して行っていて、かつアニメだけでなく吹き替えの仕事も相当数こなしているという、同年代の女性声優さんとしては破格の活躍をされていると思います。さすがにアニメの声優の仕事の本数は減らしているようですが、コンサートは精力的に行われており、今もなお引く手あまたな人というイメージです。アーティスト活動もかなり以前から行われており、その頃からずっとVictor〜フライングドッグ所属で変わっていません。声優さんが個人名義でアーティスト活動をする際には、主題歌としてタイアップされるアニメへの出演も込みなことも少なくありませんが、「たまゆら」「それでも町は廻っている」あたりではアニメへの声優としての出演はなく主題歌としてのみの参加という形になっており、声優よりもアーティストとしての比重が高くなっているようにも見受けられます。とはいえフライングドッグとアニプレックスとがタッグを組むことがほぼなかったということもあり、アニプレックス作品で主題歌を歌うことはこれまではありませんでした。ただ他方で、声優としてアニプレックス作品への出演は少なくなく、「黒執事」や「物語シリーズ」、映画ですが「空の境界」など大作での重要な役どころにピンポイントで起用されていて、アニプレ坂本真綾さん個人との関係性についてはかなり強いという印象があります。なので、個人としてはアニプレ作品で主題歌を歌っていても何ら不思議はないのですが、レーベルの垣根の問題があって主題歌への起用が為されなかった、のだろうと推測できます。
 そもそも、Victorが親会社のフライングドッグとSONY/SMEが親会社のアニプレックスと考えると何か見えてきそうです。フライングドッグが音楽制作として参加するアニメは、角川書店ポニーキャニオンバンダイビジュアルメディアファクトリーなどが製作主体の作品が多いイメージで、一部アニメの製作そのものも自前でやっておりその主題歌も制作しています。一方でアニプレックスも自前やSME系レーベルでまかなう他にも、ランティスキングレコードの主題歌のアニメがあります。両社とも閉鎖的ではなく他社との協力関係を築きながら主題歌/アニメを作っていることがわかりますので、両社が協力しないのには何か理由があるようにも感じます。そこで見えてくるのが、VictorとSONYのそもそもの成り立ちや関係性です。共に家電、特にAV機器に強い会社が音楽制作も手がけるようになったことが共通しており、ずっとライバル関係にもあるように思えます。なので互いに協力しようとしない状態が続いていたのかなあと思うわけです(そんな単純ではないかもですが)。
 あと、フライングドッグが一時期アニメの製作主体としては衰退気味だったことや、アニプレックスは親会社がSMEであることも関係してそうです。フライングドッグは坂本真綾さんの名曲中の名曲「プラチナ」が主題歌だった「カードキャプターさくら」を製作していたりと非常にメジャーな製作会社でしたが次第に存在感を低下させていきました。ここ数年で再び自社単独でアニメの製作を手がけるようになり、前期の「蒼き鋼のアルペジオ」をヒットさせメジャーに復帰してきた感が強くなってきました。一方のアニプレックスはフライングドッグの地位が低下した後に出てきたような後発の製作会社なイメージがありますが、親会社が音楽制作会社のSMEでもあることなのか、アニプレだけの意向で何処が音楽制作を担当するかを決められない傾向があるように感じます。中でも顕著なのが日5枠とノイタミナ枠で、視聴率が取れるからなのか、アニメの内容に沿ったアーティストの起用以上に推したいアーティストを起用する傾向が強いように感じてしまうことが多いです。なので、もしこのアニメには坂本真綾さんなどフライングドッグ所属のアーティストに依頼したいとなったとしても、SMEの意向と合わなければまず通ることはないでしょう。SMEとしても出資してることもありますし主題歌に起用してCDの売り上げを伸ばしたりアーティストの知名度を上げたりしたいでしょう。そういうことも重なって、フライングドッグに音楽制作を依頼することが無かったのだろうと見ています。なおアニプレは、ランティスだと元々はSME系の販売網を利用していたりなど関係があり、キングレコードとはアニメを共同製作したりするなど関係の深いところのみ協力関係を持っているような状態のようです。
 とまあ、アニプレ作品にフライングドッグのアーティストが起用されなかった理由を色々と考えてきましたが、CCさくらなど一時期はずっとCLAMP原作アニメをVictor〜フライングドッグが製作していたのが、いつの頃からかアニプレックス製作が普通になっていたりするなど(「XXXHOLiC」と「BLOOD-Cくらいですが)ももしかしたら関係しているのかもしれません。いずれにせよ良好な関係だったとは言いがたいでしょう。それでは何故そんな両者がタッグを組むことになったのかを考えてみましょう。
 もちろんアニプレックス側が坂本真綾さんに主題歌を歌って欲しかったから、というのは間違いないと思います。これは水樹奈々さんを主題歌に起用したい企画ではキングレコードと組むパターンに近いような気がします。とは言え、今までやらなかったことが何故このタイミングで実現したのかということです。そこで挙げられるのが世界征服で監督をする岡村天斎さんと坂本真綾さんとの繋がりです。10年以上前に岡村監督が作った「WOLF'S RAIN」というアニメの主題歌が坂本真綾さんだったそうなのです。それ以降の岡村監督作品はアニプレ作品も多く再びタッグを組むことは無かったようなのですが、今回はその繋がりが復活することになったようです。とは言え、これも繋がりとしてはもちろんありますけど、今まで無かった繋がりを作るキッカケとしてはそう高いものではないような気もします。となるとキッカケは何か? 個人的には悠木碧さんなのではないかと思うわけです。
 悠木碧さんのアーティストデビューはどういう経緯かはわかりませんが、個人名義ではフライングドッグレーベルからデビューしています。経緯がわからないとは書いたものの、彼女は「ラストエグザイル-銀翼のファム-」や「ダンス イン ザ ヴァンパイアバンド」「それでも町は廻っている」などのフライングドッグが関わっているアニメで主要キャラを演じてるなど関係はそもそも深いことがあるのだろうと思います。なのでいち早く彼女の人気やアーティストとしての可能性を見出したフライングドッグがデビューさせたのだろうとは思ってますが、これにより彼女の個人名義の曲はフライングドッグ以外のレーベルが主題歌制作となったアニメではタイアップができなくなったわけです。ではフライングドッグからデビューして何かタイアップがあったのかと振り返ってみると、これまでミニアルバムを2枚出したのみでどちらもノンタイアップでした。今度の「ビジュメニア」がデビューシングルかつ初のアニメタイアップということになり、その作品に世界征服が選ばれたということになり、とても特別な感じがしてしまいます。
 世界征服については、坂本真綾さんもそうですけど悠木碧さんも今のところこの作品への出演予定は無く、あくまでアーティストとして主題歌に参加している形になっています。そこでふと思い出すのが同じく声優からアーティストデビューして現在は歌手活動休止中の中島愛さんです。彼女も坂本真綾さんと同じく声優としてメインキャラで出演していないアニメの主題歌を歌うことが多く、ここ2年くらいのフライングドッグが主題歌制作しているアニメではかなりの頻度で起用されていました。そんな彼女がアーティスト活動を休止し、その後すぐ悠木碧さんにアニメ主題歌が回ってくるというのはなかなか凄いタイミングだと思ってます。中島愛さんの歌手活動休止が2月から始まるプリキュアのセンターになるための限定的なものならともかく、長期にわたるものであるのなら代わりの声優アーティストを据えなければなりません。そこでフライングドッグの声優アーティスト一覧を観てみると、角川系の人を除くと南里侑香さんくらいしかいないことに気づきます。南里侑香さんは実力のある方ではありますし、「放浪息子」などでアニプレックス作品への主演での起用実績もあるなど縁もありますが、今ここで起用するには理由が足りないように思います。また南里侑香さんがボーカルとして活動していてアニプレ作品でよく劇伴を作っている梶浦由記さんプロデュースの「FictionJunction」もフライングドッグ所属ですが、曲調的に合わない可能性が高いようにも思いますし難しいものがあるようにも考えられます。
 そこで悠木碧さん起用ということになるのかなと思います。もちろん若いのですが、声優としては既に完成の域に達してるとは思う反面、歌の方はこれからどんどん伸ばしていきたいところでもあると思います。既に人気もありますし認知度も高いです。そして決め手となりそうなのがアニプレックス作品への貢献度なのではないかと思うわけです。悠木碧さんとアニプレックスと言えばもちろん「魔法少女まどか☆マギカ」が上がります。彼女1人の力による大ヒットではもちろんありませんが、ただ悠木碧さん演じる鹿目まどか無くしてはまどマギのヒットは導けなかったのではないかとも考えています。アニプレックスは大ヒットしたアニメの主演声優さんを割と優遇して起用する傾向があるように感じますし(もちろん贔屓もあるのですけど)、まどマギ声優さんの中でも格段に若い彼女ですので、アニプレックスとしても何かお返ししたいということでの主題歌起用だったのかなとも思うわけです。例えば花澤香菜さんなどはアニプレ作品への貢献度がMAXなわけですが、それが決め手だったのかアーティストデビューの際の所属レーベルとなりましたし、最初はノンタイ路線だったのが主題歌起用も増えてきてますよね。戸松遥さんもSME系レーベル所属ではありますが、主演も多いですし主題歌起用もここのところそれなりにありますよね。事務所の関係とかよくわかりませんが(花澤さん所属の大沢事務所アニプレとは関係が深いし、戸松さん所属のミュージックレインSMEも絡んでいるのもあります)、悠木碧さんが所属してるプロフィットも「あの花」などで大人気の茅野愛衣さんが所属してることもありますしアニプレとは縁の深い事務所でもあるという認識でいます。様々な要素やお互いのメリットが合致したからこその悠木碧さんの起用だったと思いますし、彼女が持つアニプレックス・フライングドッグ双方への深い縁が引き寄せた結果だったのではないかとも考えていますが考えすぎでしょうか。さすがに坂本真綾さんの起用が先に挙がったのだろうとは思いますが、両者の距離を一気に縮めたのは悠木碧さんの存在だったのではないかと考えています。
 アニプレックスSMEの意向があるので主題歌を自由に決められないケースがある、とさきほど書きました。それでいけばアニプレックス作品で岡村天斎監督の前作でもある「青の祓魔師」は、最もアニプレでもSME側が歌わせたいアーティストを起用する傾向が強い日5枠ということもあってか、ここでの坂本真綾さんの起用はありえないものだったと考えています。では今回の世界征服はどうかとなると、浅い時間帯とはいえ深夜のU局ネットでの放送枠となり、アニプレックス側の裁量で決められやすい枠というイメージがあります。更には、今期の他のアニプレックス作品を見ていくと、2枠あるノイタミナ枠はもともとSME側の意向が反映されやすい主題歌になりますし、キルラキルもまだ後期のものには代わってませんが現在のはSME側のアーティストで、ニセコイClariSということでほぼSME系のアーティストでまかなっている状態でもあります。なので枠としては十分使えている状態なので、この作品ではSME/アニプレックス以外の外のレーベルにお願いする、という話も通りやすかったのかなとも思っています。
 視聴者が、「○○監督作品に○○ってアーティスト起用したら面白いのになあ」と勝手に考えていても案外製作会社と音楽制作会社の関係性やレーベルの壁は高く実現しないことがしばしばあります。今回の坂本真綾さんと悠木碧さんはそんな壁を超えて起用できた例だとも思ってます。そのアニメに本当に合うアーティストは誰なのかを、制限ある範囲内から選ぶのではなく自由に選べるようになるのが理想ではありますが、そうは言っても難しいものがあると思います。ただ何か突破口さえあれば実現不可能だったものが可能にもなるという例(?)にもなったと思うので、これを機にまたアニプレックスとフライングドッグとのタッグを観てみたいですし、他でもあっと驚くようなタッグが結成されるアニメが出てくることを願いたいと思います。

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