東京・大阪近郊都市イベントが絶滅する日

 以前は山口県下関市に住んでいました。そのときにも同人活動を少ししていたんですが、何となくあの頃ののんびりとした活動やら会場の雰囲気が、ビッグサイトやらインテックスに慣れきってしまった身には懐かしくすら感じてしまいます。その頃に出ていたのは、下関や小倉(北九州)、そして博多などのイベントでした。
 ただし、地方イベントはここ数年で大幅に減少しています。中でも、地方の中小規模イベントを多く手がけていたスタジオYOU(コミックライブ)や、エスイー(コミックワールド)が定期的に開催していた都市からの撤退が相次いでいるようです。エスイーはイベント事業そのものから撤退したようですし、スタジオYOUの地方からの撤退ぶりも、最盛期を知っているだけに寂しい?ものがあります。かつてはほぼ全都道府県で開催していましたから…。
 まあそもそもは、スタジオYOUとかエスイー、赤ブーブー通信社などが勢力拡大を図るべく、低価格路線で地方に進出しだしたのがキッカケだったかと思うんですが、そのために地方で開催されていた地場イベントをいくつか潰したりもしてましたし。そのツケが今になって表面化したのかもしれません。
 例えば、イベント激戦区だった京都や神戸・大阪、そして小倉(北九州)などでは、ライブにワールド、シティ(+京都は地場イベントのComicon、北九州はコミックネットワークという九州の地場イベント)が代わる代わるイベントを開催していて、酷い時には1ヶ月に2,3度も同じ会場でイベントが開催されるなど、かなり異常な状態でした。当然、人の流れも分散したり、あるいは特定のイベンターのイベントに集中したりと様々で、京都ならComiconとコミックワールドが、神戸や小倉ではコミックライブが、大阪ではComic Cityがシェア争い?に勝ち、その他のイベントを駆逐していきました。
 が、次にまた新たな流れが出来始めました。それは、都市間でのイベントの引っ張り合いです。特に距離が近ければ近いほど影響があるのか、神戸や横浜などのイベントが消滅・激減してしまっています。
 特に神戸は深刻です。ほぼ独占状態でイベントを開催していたスタジオYOUが神戸から撤退してしまいました。僕が行っていた頃(10年前くらい?)の神戸国際展示場でのコミックライブは、多い時で1200スペースくらいまで集まってましたし、三宮のポートライナー乗り場は、同人少女(?)たちで割と混雑してもいましたし、会場外でも行列がかなり出来ていました。しかし、そういう盛況ぶりも知ってるだけに、YOUの神戸からの撤退劇には驚かされました。
 
 原因は…と考えると、サークル参加者も一般参加者も、より多く集まる大阪へ流れたからじゃないかなあ?と考えています。何せ、神戸と大阪の距離は、時間にして20分ちょっと(JR新快速利用)。参加費は、圧倒的に神戸や京都のほうが安かった(800円〜3000円w)のですが、やはり集まる人の数が圧倒的でしたからね。その結果、大阪のComic Cityは、名古屋方面からバスツアーが企画されるくらいに盛況さを保っているのに対し、京都や神戸のイベントは縮小・消滅傾向なわけで。サークル参加者も一般参加者も、より売れる・より多くの新刊があるイベントに流れた結果じゃないかなあと思っています。これは、東京近郊でも起こっていることじゃないでしょうか? 特に東京なら、色んなジャンルのオンリーイベントが開催されているわけですし、ビッグサイトでの大規模イベントにも事欠きませんから。以前なら高崎や横浜、蒲田などでもオールジャンルイベントが多く開催されていたんですが、そこに参加するくらいなら、遠くても東京のイベントに参加したほうがいいと感じるサークルさんも多いでしょう。僕ら関西人が、関西のイベントよりも東京のオンリーイベントに出ようと思うくらいなんですから、それに比べたら障害は少ないでしょうし。
 ちなみに言えば、ここ最近ではどうかわかりませんが、2,3年くらい前の京都のComiconなんかでも、サークル参加数が100ちょっととか(募集スペースは1000とか1200)ってこともありましたし、「同人誌即売会」という形態が形骸化してしまっていて、ただコスプレの人たちを収めるだけの箱になっているイベントもかなり増えていました。
 そして決定的だったのが、コスプレ専門イベントの拡大です。神戸や京都の同人誌即売会は、サークル数が減少してもコスプレ参加者によって持っていた部分がありました。だいたい、京都や神戸のイベントにサークル参加したところで、ほとんど売れませんでしたからね。特に男性向けジャンルで参加していたので、立ち止まってくれる人すらほとんどいない状況でしたから。だから多くのサークル参加者は、サークル仲間との交流の場としていたり、一般参加者も似たような目的の人が多かったような気がしました。あとはコスプレ参加者との兼用。サークル参加とコスプレ参加を兼ねている人も多かったように思います。しかし、コスプレだけを目的にして来る人が増加し、会場の片隅でしか行えなかったり、写真を撮るのにも背景が殺風景な壁面だけの即売会ってのが避けられる傾向になり、その受け皿としてコスプレ専門イベントが増加し多彩化。京都で即売会を行っていたComiconは、即売会開催を縮小してコスプレ専門イベントを拡充しましたからね。
 逆に、他地方に進出しにくい地方の主要都市のイベントはかなり盛況です。中でも福岡は、福岡Yahoo!ドームで開催されるComic CityやCOMICNETWORKのイベントが強力で、サークル参加も一般参加ともに盛況ってケースが多かったように記憶してます。流石に下関から関西に戻ってきてからは行けてないんでわからないんですけど。地場イベントを根付かせている地域でも、大幅な即売会の縮小は行われていないようです。
 逆に企業イベントは、採算性の問題もあってか縮小・消滅傾向です。YOUのコミックライブこそ、名古屋や仙台、小倉、広島などの拠点イベントと、大都市から遠い地方都市のイベントは継続していますが、京都や高崎といった大都市圏近郊イベントに強かったエスイーの撤退により、東京や大阪近郊のイベントは継続が難しい状態になっています。元々、即売会としての性格が弱まっていたイベントがほとんどだった…のではありますが、無くなると復活することは難しいわけで。仕方ないのかなあと思いつつも、同人のすそ野が狭まる気がして、やるせない気がしました。

(追記)
http://d.hatena.ne.jp/rikio0505/20081210