原作を知らない人に送る、CLANNAD AFTER STORYのピンポイント解説

 某所でスレを見たんですが、結構荒れてたんですね。原作派にはちと気になる部分があったのはわかったんですが、アニメオンリーの人たちにはそれこそ「??」だし「CLANNADは人生じゃなくてゲーム」とかボロクソに描いていた人もいたようです。
 原因はいくつかあると思いますが、やはり「幻想世界」と「幻想世界の少女」、それと汐の関係性がまず一つ疑問として残るでしょう。あとは、「何で渚や汐が助かったのか?」ってことに説明が無い部分とか、最後の場面(渚が助かったところ)はどんな世界なのか? と言うことでしょう。これらについて、原作の考察からアニメに適用できるような形で解説してみたいと思います。

-幻想世界や少女、汐との関係性(+風子)
 アニメでははっきり「幻想世界の少女=汐」と言う意味で書かれていました。原作では、風子が「可愛いにおい」の正体を見つけ、探すんですが、姿かたちは見えておらず、ラストのセリフで「いますか?」「風子です」というくだりのセリフがあり、それが終わるとタイトル画面に戻り、そこには光の代わりに幻想世界の少女が寝ている絵に変わります。ですので、風子はあの場面ではっきりと汐を見たわけでは無いんですよね。ただ、一応の原作者の認識では「少女=汐」のようです。
 幻想世界は、朋也たちがいる世界と同じように進んでいく平行世界です。渚と朋也・少女とガラクタ人形(元々は光)の出会いから始まり、学校卒業・あの小屋にとどまるだけの世界からの卒業、社会人になって一人立ち・旅に出る…という風に。
 そして、朋也と渚・汐の関係が、ガラクタ人形と少女の関係に置き換わっただけですし、渚が死んだ後は汐に引き継がれたので、人形と少女の関係は変わっていないんですよね。
 また、渚は幼少時に死に掛かったときに、町を愛する秋生があの場所へ連れて行き、そこでの願いを町が叶え、町そのものである少女が渚の半身となることで生きることが出来たわけです。その後、町の自然が奪われていったり、単純に冬になり緑が減るような時期には町が弱るのか、渚が発病してしまいます。汐も同じですけどね。アニメでは冬に渚が動いていたかどうか覚えてませんが、恐らくは冬に元気な状態の渚はほとんどいなかったはずです。
 また、何であんなに風子をアニメスタッフがひいきしたのかってことですが、単純にスタッフが好きだったから、と言うのも理由ですが、風子が特別な存在だからでもあります。
 風子はプチ汐だったり幻想世界の少女だったりします。まずはヒトデ。あそこまでヒトデにこだわるのはキャラ付けの意味かもしれませんが、ヒトデは普通「☆」ですよね。☆=光と言うことで。自分のシナリオでは、自らが光を作りたくさんの人に配り、そして姉である公子さんの結婚式にたくさんの生徒を集めることに成功し、たくさんの人の祝福と言う「想い」を集めることに成功しています。これは、朋也がこの作品を通して光を集めたことと似てる部分があるんですよね。また、風子は渚を気に入ってましたが、汐へは溺愛でした。渚や汐の中にいた少女に惹かれていたということも言えると思います。あとは二つの世界に存在していたこと。学校で朋也たちといた風子と、病院で昏睡状態だった風子と。二つの世界にまたがって生きていたのは、朋也や渚・汐以外には風子しかいません。この辺も特殊で、原作者にも特別扱いされていたために、アニメスタッフも重用した所以です。

-何で渚と汐は助かったか?
 改めて考えてみると、恐ろしく説明不足な部分でした。アニメの各話のタイトル画面で光が表示されていますが、これは登場キャラクターたちの願いが叶ったりしたときに増えているはずです。そして、幻想世界で見える光は、町の人たちが幸せを願う想いでした。
 こうした光が集まったことで、想いの力が少女を動かして奇跡を起こす…と書くと、やはりもの凄くご都合主義に思えてしまいますよね…。ゲームではもっと長いし、秋生や早苗さんのエピソードもあったので、もの凄く色んな幸せな風景を朋也が作る手助けをして、長い長い道のりを歩いてきて、最後はああいう結末(汐との旅行)になってしまったわけですけども、頑張ってきたご褒美みたいな形でトゥルーエンドもあったのかな?と思うのです。アニメではその辺を納得させるところには至らないですね。ただ、朋也と汐が倒れたあの結末で終わり…ってのにも一般視聴者は耐えられないでしょうが、ご都合エンドでもダメだったら、どういうエンディングが良かったのかなあ?とか。僕がSSで書いていた、朋也と汐の二人の生活が続いていて、風子や杏もそんな生活に加わっていって…っていう、汐編が続いていたら、って話だったら納得したんでしょうかね?

-朋也と汐の旅行が終わった世界と、渚たちが助かった世界との関係は?
 これは、ゲームでは明確にループしていましたから、パラレルな世界と言い切れます。ただアニメでは、結局どこの選択肢でも間違えていないわけですし、見た目では一本道なのにいきなり時間が戻った?って驚く展開になってしまってます。ゲームでは、最初は絶望した朋也が「渚と出会わなければよかった」って回想するときに選択肢自体が現れず「出会わなければよかった→抜け殻のような生活」という流れが自動だったんですよ。アニメではそういう演出自体がありましたっけ? で、汐編まで終わり、各シナリオでの必要な光を集め終わると、渚が汐を出産するシーンで「出会わなければよかった?」となる場面で選択肢が現れ、ようやく奇跡が起こり渚が生きるわけです。その辺の説明がアニメでは為されていなかったわけなので、わからなくて当然だと思います。ですから、他のキャラのシナリオと同等に、朋也と汐が倒れた世界も、渚が助かった世界も、一つの可能性を示した別の世界とも言えるでしょうね。この辺は、原作者がゲームならではの世界観やシナリオの設定をしたために起こった弊害みたいなものだと思います。
 平行世界の描き方なら、リトルバスターズ!のほうが何十倍も上手く出来てますけどね! そこをどうやってアニメ化するのかって思ってますけど…。


 こんなところでしょうか? そもそもがアニメ化で良さが伝わらないだろ?!と思っていた作品だったので、むしろこれだけ新規でCLANNADに触れてくれる人が多いこと自体が感激しているんですけども。ただそんなご新規さんが読後感悪く去ってしまうのは惜しいんで、ヘボいですがウチの「岡崎家」とかを読んでくれたり、ゲーム原作をやってくれたりすると嬉しいのですけどね。
http://rikio.hp.infoseek.co.jp/
 解説などしてほしい部分があれば受け付けます。