原作ファンから見た「もうひとつの世界 杏編」〜CLANNAD AFTER STORY 8巻より

 かなり遅ればせながら見ました。一応この話は、ゲーム原作の藤林杏シナリオがベースになっています。
 ただ…惜しい、ですね。非常に惜しい。何が惜しいかと言えば、1話にとどめるのが本当に惜しいってことです。2話あれば納得できる展開になったのに…と本気で思いました。短すぎましたね。以下が表示されてない場合は「続きを読む」をクリックしてください。


 しかしながら、京アニの本気みたいなものは見えましたけども。杏編をそのまま端折ったような作りであれば落第点なんですが、ところどころオリジナル要素を入れ込んで、なるべく短いながらも納得できるような内容にしていたあたりとか、エンディングはAnaを流して、その間もエピローグが流れるような作りにしたところとか、最終回をそう作っておけば…って思った人もいたんじゃないかというくらいに良い作りじゃなかったかな?とも思えました。
 中でも良かったのは前半部分ですね。椋と付き合うようになって、学校で、街で見る杏のあのやつれた姿。個人的にはもっと追い込まれたほうが好きなタイプではあるんですが(汗、いいですよね。途中までは『ヤンデレの女の子に死ぬほど愛されて眠れないCD』の広橋涼にしか思えなかったw 椋の、照れながらも一生懸命で幸せそうな姿も良かったです。ってか、この話だけ見たら、杏じゃなくて椋のほうが可愛いと思うんですが(元々椋が好きな人はすいません)。
 ただ後半部分は…。話が展開していくところが急すぎましたし、何より杏のことを好きになる要素が少なすぎました。原作で言えば、例えば空き地でのボタンとの出会い話だったり、アメジストタンザナイトのくだりだったり、杏と椋の料理の腕の差とか…、それこそユーザーが杏に惹かれるようなつくりになっていたんですよね。それらの要素がそぎ落とされた上、杏の魅力がより描かれた一期(学校編)から遠く離れた二期の終わった後と言うことを考えても…これでアニメからの人が杏に惹かれるのかどうか、やや怪しい部分はあると思います。AFTERでも杏は結構出てましたが、原作と違って完全に朋也のことを吹っ切れてしまっていましたし…。それでも杏の人気は高いのでしょうから、最後の最後に杏を持ってきたことで、杏ファンにとっては溜飲の下がる結果になったのでしょうか? 智代に比べても、幸の薄い感じが杏にはありましたからね。アニメ一期の18話のあの展開が印象に残ってるとか、あの場面での杏や椋の涙に泣いた人たちにとっては、これを見て欲しいですな。
 やっぱり、CLANNADの良さって「タメ」なんですよね。「タメ」が生む深くて長い感情移入というか。原作にあって、アニメでは一部だけしか再現できなかった要素はそこかと思います。尺の問題で致し方ない部分はありますし、元々がアニメに向かない作品だと思っていただけに、別の要素では凄く頑張りましたけども。ただこの「キモ」とも言える部分がこの「杏編」でも再現できていなかったかなあ、と少し残念に思いました。
 髪を切った杏と朋也が出会う場面だったり、エピローグの雰囲気や描き方は好きですけどね。原作どおりだったらどうしようかと思ってましたけど…声優さんが違うので、その通りの演出になっていたのは良かったかと。ただし、尺の問題か、ほとんど印象に残らない場面になってしまったなあ、と(汗。原作は誉められるような話ではなかったにしても、僕は感情移入をバリバリにしていたので、めちゃくちゃ印象に残るシーンだったんですけども。そこまでのインパクトは産めなかったようです。
 
 最後に言いたいのは…勝平を京アニが登場させなかった理由がわかったと言うことですw なるほど、これなら椋がビッチ扱いされずに済むし、むしろかなりポイントの高いキャラに昇格したかもしれないですねww 原作での藤林椋というキャラの扱いの酷さには閉口気味だった僕ですが、アニメスタッフの一貫した描き方は凄く好感が持てました。「藤林椋再生計画」に監督か脚本の方が入っていたのかなあw