鍵っ子目線の「劇場版CLANNAD」再考

 karimikarimiさんとこの「劇場版CLANNADをみんなでみよう」企画に関連して、鍵っ子である僕ことりきおから見た場合の、劇場版CLANNADの印象を軽くまとめておきます。ネタバレエントリなので、見てない人は見てから読んでください。
 東映Kanonは見てないのですが、劇場版AIRは映画館で見てて、それを踏まえてフィルターをかけた上で、やはり映画館で見ました。フィルターと言うのは、出崎監督が「原作をリスペクトしない」どころか「原作をプレイしない」上で映画を作っていると言うことを踏まえた上で、原作踏襲度の観点からは全く期待してませんでした。その上での劇場版CLANNADだったので、原作リスペクト派でも劇場版AIRを見ずに劇場版CLANNADを見た人よりは冷静な視点で見れているはずです。
 さて感想としては「AIRよりは良かったな」と言うものです。劇場版AIRは本当に原作レイプっぷりがひどかったですので。AIRについては、劇場版オリジナルで序盤は進んでいたのに、後半は原作の名シーンを意味もなく切り貼りしての、全体としては全くまとまりに欠けるものでしたので。それと比較すると、CLANNADはマシだったなあ、と言うものなのです。
 何が良かったのかと言えば、やはり単体のアニメ映画としてはまとまりがあった、と言うことでしょう。AIRの原作継ぎ接ぎの後半部分とは異なり、CLANNADはほぼ全体を原作から作り変えての再構成でしたから。変に原作の名シーンをいれると言う原作レイプ行為に走らずにまとめたところは、素直に評価出来ると思います。
 また、90分と言う限られすぎた時間の中で描かれたことも凄いんじゃないかと思います。何せ、90分で学校編もAFTERの汐編も入ってますからね。前半で学校編の創立者祭を描き、後半でAFTER〜汐編を描くと言う構成にはある意味で隙がありません。2クール40話以上を費やせた京アニ版と比べて時間の制約がありすぎたにしては、CLANNADで描いておきたいポイントはかなり押さえられていたのではないかと思ってます。何せ、渚はもちろんのこと、智代や杏、伊吹先生とかかなりのキャラが登場しましたからね。風子とか出てませんが、むしろモブとしては扱えないキャラなので出さなくて正解だったんじゃないかと思います。
 そして何より「ご都合主義」な話にしなかったこと。京アニ版はその辺での不満も多いようですが、東映版では「渚復活!」の展開はありませんでしたから。渚の死に苦しみ、そして汐を受け入れ、仲間と共に再起して歩んで行く…という流れは、一本道にした場合に生まれる矛盾も解決しています。
 ですので、原作をプレイせずにいきなりCLANNADに入った人が、この劇場版から見ても、それなりに面白さは伝わるような気がします。京アニ版を3話見るのよりも手早く触れることが出来るのかも知れません。

 ただ、どうしても看過出来ない問題も。
 まず原作派からすれば、キャラクターの性格改変があり得ません。特に杏ですよね。まるで智代の舎弟か子分ですから…。ここが一番印象に強いんじゃないかと思います。伊吹先生も、原作の清楚なイメージから一変、護身術を使える武闘派になってますからね…。まあ中の人的にはそういうのもアリなんでしょうし、こういう公子さんも嫌いじゃないんですが……。
 幻想世界のイメージがムチャクチャとも思えます。原作では、現実世界との平行世界として成立してて、かつ町にしか意志が無いという世界観なのですが、劇場版ではよくわからない世界になってしまってます。ガラクタ人形も奇怪な人形になっていて怪しさが増してますしね。ただ、原作の幻想世界も理解できないと言う話はよく聞くので、「よりわかりやすく構成した」とも言えます。
 また、学校編から渚が死ぬところがかなり急展開過ぎた気が…。原作を知ってれば「うお、飛ばしたな!」って思えるんですけど、これから見た人はどう思ったんでしょうか? あまりに詰め込みすぎて内容を把握し切れない可能性がどうしてもありますよね。原作では段階を踏みすぎていたのでどっちもどっちではあるんですけども。
 でも、全体を考えて言うと「90分で映画化したことが何よりの間違い」と言う結論ですw 何せ、例えば小説2巻のボリュームである「空の境界」があれだけ続編続編で作られていることを考えると、CLANNADほどのボリュームの作品が単発の映画一本だけで映画化されていること自体がおかしいわけです。そこに目を瞑れるかどうか? そこに劇場版CLANNADにおける評価の土台が決まってくると思います。90分の映画での内容とすれば良かった、あるいは最善を尽くしたと言えるのか? そもそも90分でCLANNADを表現するのはムチャぶりだったんだよ!と思えばそれまでですしね。原作をプレイしていると、単発のアニメ映画としての評価はどうしてもできませんから。
 なので、原作を知ってる・リスペクトしている人が見るのであれば、90分でCLANNADを描くとこうなる、と思って見ることですね。例えば、「人生」は描けていても「家族」は描けていないとか、そういうことだと思います。原作原理主義者には到底満足出来るものではありませんし、そこは切り離さないといけないと思います。
 が、あまりに原作が長く詰め込みすぎなので、このくらいテーマを絞って描かれたCLANNADという見方が出来れば、思い返すとこれも悪くありません。まあ、僕は映画を見た後は「ポカーン」だったんですけどね。他の観客と同様にw


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