恭こまカップリングと真剣に向き合った「Love letter for you vol.1」

 あまりにガチ過ぎてたぶん誰も持ってると思う同人誌ですが、これはすげえ!ので長文の感想と共に掲載させていただきます。

 まあ観たことありますよねw ってか冬コミ行ってたら確実に買ってますよねw みさき樹里さん(PARADOX)と、草SSのほうで活躍されている鈴木このりさん(鈴木弐番館)の合同による、リトルバスターズ!棗恭介×神北小毬(恭こま)本です。原作+小説を鈴木このりさんが、マンガをみさき樹里さんが担当されている、マンガと小説の本です。分厚いです。
 何が凄いのかと言えば、かつてここまで恭こまという、リトバスにおける人気カップリングについての成立するか否かを描いた作品は無かったんじゃないか?!と思うくらいの密度とアイデアが詰め込まれた一冊なのです。しかもB5・オフ・68Pというボリュームにも関わらず、まだ前編という恐ろしさです。
 読み応えについては言うことありません。みさきさんが担当しているマンガの部分で掴んでおいて、このりさんの小説が、ややマンガ部分のアフター+後編への伏線と言うか予告のような展開にもなっているので、総じてバランスが取れているのもポイントです。
 以下はネタバレ含むなので、読んでない方は飛ばしてください。


 何より、安易に恭介と小毬をくっつけてないところが、考察やSS書きの身からすれば「おおっ!」となるのです。そういう同人誌もあるにはありましたが、ゲームとは別に、ゲームのシナリオ並みのボリュームで「恭こまルート」を作ろうとしている、そのくらいの内容なんですよね。
 個人的には「神北拓也」をキーパーソンとして登場させたアイデアが思いつかなかったです。読めば、確かに「兄」と言う恭介と同じポジションですし、虚構世界の設定を考えたら絡ませることが意外でも何でもないのかもしれませんけども、故人をこうやって登場させて話を深化して展開させていく手法は、アイデアだと思います。やってる人が他にいるのかもしれませんが、絡み方や干渉の仕方が上手いですね。違和感が無いという以上に「面白い」んですよ。特に思ったのが、拓也の言動や行動がリアルだったことですね。中学生くらいで亡くなったという設定を上手く生かしているんですよね。やたら子どもっぽかったり、小毬に大して過保護すぎるところだったり、死んでからは成長していないところとか、とにかく拓也に対する描写がハンパない感じでした。
 もちろん、恭介も小毬も描写は素晴らしいです。小毬の、表面上だけ強く見せてるところとか、恭介の、自分のことだけは鈍感すぎるところとかは、原作どおりですんなり入れます。この辺は原作ファンや、やや原理主義よりな人でも受け入れられるんじゃないでしょうか?
 そして、段階を踏んで少しずつ、このルートを進めているところも良いですね。最初からフラグが立っているわけじゃなく、そのフラグを立てるまでの描写を手を抜かずに一歩ずつ描いているわけで。ここまで先の展開を急がないのに描ききろうとしている同人誌はなかなか無いでしょう。まあ、これ下巻で終わるのか?とか、ドコまで描いて終わりなのか?など、色々と疑問に思う部分はあるんですけども……(汗。

 それに、お二人が共に好きなキャラだしシチュエーションで描いたんだなあ、と言うのが読んでいてにじみ出てますね。小毬の兄の拓也なんて、好きじゃなければここまで登場させられませんよ。このりさんが原案ですが、もちろんみさきさんのマンガは、原作をマンガ化した部分だけではなく、みさきさんのアイデアも随所に入れているのだと思いますので、いつもの「PARADOX」のシリアス同人誌と作風が変わっていると言うことはありません。むしろいつも以上に濃い内容と言っても過言では無いでしょう。

 これは、僕が言わなくても良いに決まってる同人誌です。と言うか、大手・有名な方がここまで心血注いだ同人誌を出してるので、僕らのような人間が中途半端な本を出してる場合じゃないな、と自戒もしないといけません……。好きなだけでは出来ませんし、リトバス同人界を背負って先頭をひた走ってる感もありますので、ただただ応援したいですね。
 ちなみに、5月のミッションスタート3で下巻が出るそうなのですが(本当に?)、支援の意味も込めて、買われていない方はぜひ買って読みましょう! とらのあなではそろそろ在庫が尽きそうらしいのですが!