けいおん!!20話の、最後のカットの唯と律が意味するものとは?

 『シンヴェニア』さんのこの記事を読んで「なるほどー」と目からウロコが落ちたんですが、個人的にはもう少し違った見方をしているのでその辺をこの際書いておこうかと思います。
 けいおん!!20話の、いわゆるライブ回での最後のカットは、二期でさんざん京アニが推奨してきたゆいあずではなく、唯と律の繋いだ手のアップだったわけですが、これって最初見たときには凄く意外にも思えました。何故かと言えば、20話までのけいおん!!において唯と律は、どちらかというと距離を置いていた感があったんですよね。それがここに来てのクローズアップだったので「これは流石に大きな意味があるんだろうなあ……」とは思っていましたが、その後の話を見ていればある程度は理解できるようになってたかと思います。
 わかりやすく、また極端な言い方をすれば、あのシーンは唯と律の「仲直り」みたいなものだと思うのです。別にけんかしていたわけではありませんから非常に不適切な言い方ですが、言い替えると「お互いを認め合った」瞬間だったのだろうと考えています。というのも、けいおん二期においては特に、律は唯との距離を置きたがっているように見えました。
 僕の過去記事で『田井中律は「バランサー」なのか「八方美人」なのか?』というものを書きましたが、律というのは軽音部に置けるバランサーで、かつ皆をまとめるような役割を担っていたと思ってます。1年の時は割と適当だったものの、人前が苦手な澪と、お嬢様で友達という存在がいなかった(と思われる)紬と、超天然かつマイペースでやる気の薄い唯というバラバラの3人を、さらに梓というまた全然違うところから混じった4人を、律が積極的に接することで軽音部に溶け込みやすくするように配慮したりしています。逆に言えば、幼なじみで親友の澪ばかりフォローするわけではなく、割と皆均等に接することでバランスを保っていたようなそんな役割を担っていました。例えば律紬回なんかは、やや距離を置いている感のある紬が律にワガママを聞いてもらうわけですが、律はそんな紬の願いを叶えるまで付き合いましたからね。あの一件もあり、紬は軽音部の中で自分を出せるようになったんじゃないかとも思うわけです。
 しかしながら律は、軽音部に置いて最も性格的に合っているのが個人的には唯だと思ってます。何せこの2人の悪ふざけというか思いつきでの息の合い方は異常です。二期でも、澪のファンクラブイベント回では2人で司会進行を務めましたし、澪と梓のケーキ入刀なんてこともさせていました。唯も律も思いつきで行動してしまうタイプですし、先の目標に進むよりは目先の楽しいことに目が行くタイプ……とか考えると、むしろ唯と律は凄く近い性格をしているのではないかと思ってしまいます。
 ただし、律は途中から軽音部の部長としての責務を果たそうとし始めています。もちろん、届出用紙を忘れたり、部長会議をサボったり(?)あまりいい部長とは思えませんが、さわ子先生とは一番よく話していますし、和ともかなり関わりを持っています。それに、軽音部の外、他の部の生徒たちとも自分が率先して話しかけているようにも見えました。唯とは異なり、社会性も身につけていってますよね。そしてもう一つ見逃せないんじゃないかと思ったのが、「唯の保護者」としての役割です。
 唯の保護者といえば、もちろん和ですし憂ですが、憂は御存知の通り、唯を堕落させてしまう過保護で極度のシスコンなので、唯を成長させることは出来ません。また和は、恐らくは唯の進むべき道を示したりはしていたと思う(例えば高校受験とか)のですが、唯の成長を割と側で見続けてきたと思いますし、その結果こうなってしまったこともわかっているでしょう。なので、保護者にはなったとしても、唯の方向性を大きく変えるようなことはしなかったでしょう。梓も保護者というか唯に意見することが多いのですが、やはりそこは年下ですし同じ目線では無いでしょう。そうなると、律がその役割を担うようになった、あるいは憂や和から受け継いだのではないかと思うわけです。
 律は唯とよく似た性格だったり、同じように勉強は苦手だったりと、当初は同じような立ち位置にいます。進路だってそうですよね。紬は早くから女子大進学を決めていましたし、澪は高い学力があるので選ぶ余地があったのですが、律と唯は何も決めていませんでした。当初はお互いに「ミュージシャン」とか書いてしまうくらいのものでした。ただ律のほうはとりあえず先に何を書くかとか決めてたりしますが。これって、もちろん律と唯が同じような立ち位置にいるからこその出来事なんですが、違う見方をすれば、律が、進路のことで全く置いてけぼりの唯と足並みを揃えることで、唯がひとり取り残されないようにという風にも捉えることが出来ないでしょうか? 一緒に歩くことで、おそらくは前を歩いていたりあるいは自分の仕事が忙しかったりする和とは異なる立場から、唯の成長を見守ったり引っ張ってあげることが出来るようなポジショニングを、律がしているように思えるのです。
 なので、例えば唯が律に抱きついてくるシーンがいくつかありますが、律は嫌がりますよね。百合的な志向はないのを見せているわけでも、唯のことを嫌っているわけでももちろんないでしょう。これは、唯を全面的に受け入れるわけじゃないという意思表示の意味と、和も唯に抱きつかれていい顔ばかりをしているわけでは無いのでそれに倣っている可能性もあるでしょうね。そして、唯のやる気ない感じの時にも、最終的には律が諌めて唯の軌道修正をする立場になっていますし。しっかり唯のしつけをしているようにも思います。
 唯はその甲斐もあって成長しましたよね。二期の一話では、早朝から自主練するくらいのヤル気を見せていたりしますが、まだまだ「メンバーのため」ではなく「自分自身のため」に練習してるに過ぎませんし、講堂(始業式会場)への行き帰りの際も、どちらでも道草を食って皆と足並みを揃えなかったりと、まだまだ自己中心的な行動をしていました。しかし、軽音部のために梓を打ち解けさせるための行動を起こしたり、「U&I」で他人への感謝を歌ったりと、終盤は仲間のことを考え思いやることができるような、そういう成長ぶりだったと思います。
 そして何より、軽音部部長として自分たちのバンドのメインボーカルを任せ、最終的には歌詞まで書かせてライブを成功させるところまで見届け、一緒に創り上げたのです。唯の成長に大きく影響したというか主体的に関わっていたのは明らかだと思います。その後、ライブ終了後のあのシーンへと繋がるわけですが、軽音部の部長とメインボーカルとしての関係が終わったことと、あとは保護者としての役割が終わったことと、保護者が必要な状態を卒業したことを示していたんだなあ、と思いました。なので、この後の話では、唯と律はめちゃくちゃ仲の良い状態に戻ってますよね。戻ったというよりも、以前よりも更に息ぴったりな状態になったような。国公立への推薦が取れそうだった澪を翻意させるくらいに仲の良さを見せつけていたようにも感じました。
 このふたりは卒業後も親友でいられるでしょうね。音楽を通じて知り合った仲ですが、ずっとじゃれ合って欲しいしそれを眺めていたいと思わせてくれます。その始まりがもしかしたら、あの繋いだ手のカット、だったのかもしれませんね。

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