けいおん!!田井中律は「バランサー」なのか「八方美人」なのか?〜けいおん!!考察

 さて、今回は田井中律ことりっちゃんを取り上げてみましょう。ところで、りっちゃんはひらがな表記が正しいのか「律ちゃん(律っちゃんってのもある)」と漢字で書いたほうがいいのかどっちなんでしょうね? 同人誌でも両方あるような気がしていて時々もにょりますが。
 
 そんなりっちゃんですが、いったいどういう存在なんでしょうか? この「けいおん!」という作品においては、それこそ一番かもしれないくらいに属性が付与されているキャラだということは、恐らくはご存知かと思います。「部長」ですし「姉」ですし、あとは「おでこ」と。男言葉は澪もその傾向があるので、ふたりでひとつの属性って感じでしょうが、非常にわかりやすい設定かと思います。他に姉キャラは、実は唯がいますが、唯はああいう残念な姉でかつ出来る妹を持っている関係上、唯の姉キャラの対称として姉キャラとも考えられます。
 軽音部には二つの軸があることは、前々回や前回のエントリで書いたとおりです。リアリスト路線の澪と、刹那的な快楽を求めている唯と、事実上どちらに付いて行くかで、澪派であったり唯派であったりが決まって行くわけですが、紬は学校生活が有限であることを知っているために唯派となって楽しさを追い求めている、梓は唯に毒されてしまっててもはや唯以外のことはほとんど考えられなくなっている+卒業が迫っていないために「楽しさ」を純粋に追求できるために唯に付いてきている、といえると考えています。しかし律はどうでしょうか?
 作中では、唯の悪だくみに乗ったり、逆に唯を乗せたり、澪をからかったりとやりたい放題な感もある律ではありますが、その行動はある面を考えるとブレまくっていると言えなくないでしょうか? 唯とふたりで悪ふざけをしたり、寸劇を打ってみたりと唯とつるむ場面は非常に多いのですが、その反面、行き過ぎた行動や思考をする唯には困り顔になり、時にはツッコミを入れることもあったりもしています。澪に対しても、からかう場面や唯側に立つために放置したりもしているんですが、夫婦漫才に終始したりする場面や、何かあれば真っ先に電話していたりと、幼なじみならでは以上の仲の良さを感じさせる部分もあります。
 しかし、どっちなんでしょうか? 律×紬回もありましたし、こうやってみると「八方美人的」と言われても仕方がないくらいに色んなキャラを立てようとしているようにも見えます。ただ、ともすれば浮いてしまいがちのキャラたちの側に立って、唯に乗ってみたり時には唯を斜めから見たりしている姿勢は、バラバラな思考の軽音部をまとめようとしている行動にも映ります。
 そうなると律は、軽音部におけるバランサーの役割を果たしていると言えるのでは無いでしょうか? あるいは、とかく暴走気味の唯を制御し、そして成長させようとしているのかと。
 そもそも軽音部は、真面目に部活をやろうとしている澪と、初心者であまりヤル気が感じられない唯と、住む世界の違うお嬢様の紬とをまとめないといけなかったわけで、そのかすがいの役割を果たしていたのが律だったと思います。唯の天然モノの行動や発想に乗ることも、軽音部に唯が馴染めるようにしてきたことでしょうし、でも電話したり唯の暴走を途中で止めたりするあたりは、許容できる・できない線引きを律自身がしているようにも感じます。おかげで16話の唯は、梓に一切抱きつくことはおろか、自分から触れることもせずに落とすことに成功してしまいます。唯は、紬に抱きついたり律にも抱きついたりしているんですが、紬は何もリアクションを取らず自然なんですが、律はあからさまに嫌な顔をするんですよね。もしかすると、その辺で唯に学習させたのかな、と。

 そういえば律は、さわ子先生や和との接点もそれなりにあるんですよね。もちろん軽音部部長だからこそ、と言われたらそれまでではありますが、しかしながら律がいなければどうだったでしょうか? 律以外が部長をしていればまた話は別でしょうが、唯は無理、澪も目立ちたくない一辺倒なので無理、紬も元々は自分がないキャラなので無理、となれば、律しか部長はいないんですよね。梓も下級生ということもありますが、どちらかと言えばツッコミキャラなので難しいでしょう。なので、律は部長であるからこそではなく、そもそも本来持つキャラクター性が、さわちゃんや和と言った外部のキャラとの橋渡し役を可能にしているのではないでしょうか? それこそ八方美人的とも言えますが、軽音部の社会性の部分を一手に担っているという見方もできると思います。ただ律にとっての一番は、何度か電話している場面が見える澪なのは間違いないでしょう。百合的な意味合いはあまり無いような気がしますが、軽音部においても、ドラムとベースという、リズム隊として一心同体で無ければならないポジショニングでもあるわけですし、お互いが特別な存在だと認め合っているのでしょう。あるいは、成熟した関係なので、目に見えてイチャイチャするようなことはしないだけかもしれませんが。
 最後のかばんが並んでいるシーンでは、梓のかばんが唯のかばんに寄りかかってるシーンがありますが、実はOPでは澪や紬のカバンの上にあった律のかばんが、ED前では並んでいて澪と寄り添うような形に変わっているんですよね。細かいなあとw やはり律と澪もくっつくという意味なんでしょうね。唯が成長出来たことで、律も安心してバランサーの立場から降りれたとも考えられます。
 その意味では、これからの律の行動が楽しみですね。何せ軽音部部長としての肩書きももうすぐ終わりですから、ようやくまとめ役としてではなく、ひとりの女子高生、田井中律としての高校生活が始まるわけですから……。そういう視点でこれからのけいおん!!を見るのも一つかなあ、とか思っています。
 


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