売れる美少女アニメに必要?な「女性向け要素」

 先日のNHKで放送された「MAGネット」で、『STAR DRIVER 輝きのタクト』ことスタドラが単独で取り上げられていましたね。放送中の民放アニメを取り上げたこと、しかもそれがよりによってスタドラだったってことに驚きを隠せないでいるのですが、内容も非常に面白く、よりスタドラの結末が楽しみになるようなものでしたね。NHKの英断(?)には感心させられますが、問題はスタドラがそこまで人気かどうかって話です。
 スタドラはBD/DVD1巻が初動で1万2000枚と、商業的にも成功しつつあります。1,2クール切り替わりの前後で話がシリアス方向に振れ、非常に面白くなってきたのとタイミングも近かったためだとは考えられますが、特筆すべきはBDとDVDの売上数の比較です。BDは7300枚、DVDが5000枚と非常に近かったのです。男性のアニメファンはBDレコーダなどBDの普及率が高く画質もいいBDを選びがちですが、女性の場合、女性向けアニメはBDを出さずDVDだけの発売というケースが多いので、BD普及が進んでいないか、より安いDVDを選択するケースが多いようです。そう考えると、スタドラは男女共に人気が高いということにもなるのかと思います。同じ傾向は、昨年放送されたAngel Beats!のBD/DVD売り上げ比率でも伺うことが出来ます。BD売り上げは波がありましたが、DVDは毎巻1万枚程度を堅調に売り上げていました。
 上記で挙げた2作品は、ともに男女ともキャラが多く、男同士・女同士・男女と作られるカップリングが多彩という特殊な作品ではありましたし、作中でそれを狙うようなシーンがいくつもあり、そこに食いつく視聴者が多かったのも事実です。そこ以外にも、友情がストーリーと合わせて描かれていたり、泣けるシーンがあったりなど盛りだくさんなところも人気の一因だったと思われます。

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 その一方で、キャラ萌え要素が強い作品でも女性ファンが付いていると思われる事例がいくつか観られます。例えば、「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」って実は女性ファンもそれなりに付いていると言ったら結構驚く方もいるんじゃないかと思うわけですが、これがそれなりの数いるようなんです。同じことが「とある魔術の禁書目録II」にも言えます。禁書のほうは男キャラ同士のカップリングが出来ないこともないですし、派手なバトルシーンも見どころの一つと言えると思いますが、俺妹の場合はそうではなく、ストーリー性というよりはキャラクター性に特化した内容になっているわけですし、男キャラ同士のカップリング的な要素も非常に薄く、あまり女性ウケするような内容ではないはずなのですが、共にかなりの数のDVD売り上げがあり、女性ファンが一定以上付いていることがわかります。DVD売り上げ=女性というのは非常に強引な結びつけですが、腐女子さんたちにも人気のある「Newtype」での作品人気投票でどちらも上位に入っているので、男性ファンだけの数字では無いはずです。
 この2作品に共通して言えることは、とにかく主人公が人気だということです。Newtypeの男性キャラ人気投票で、禁書の上条当麻と俺妹の高坂京介は共に上位にランクインしています。上条さんの場合は、あの筋が通っているのかいないのかわからない説教だとか、やたらと問題に首突っ込んでしまうけど拳で全部解決してしまうところとか、圧倒的に優しいところなどがウケているような気がします。同じことが俺妹の京介にもどうやら言えるようで、あそこまで妹のワガママに付き合ってあげたり、ピンチを解決してしまったり、極めて献身的なところなんかが人気なようです。京介の場合は、声優さんが中村悠一ということでも人気が高いようですが。
 スタドラの主人公ツナシ・タクトはNewtypeの人気キャラランキングで首位を独走していますし、AB!の音無もランクインしていたことを考えると、これら女性ウケする作品の共通点が浮かび上がってきますよね。そう、「格好いい男性主人公モノが女性にウケる」という傾向です。
 同じ路線で、女主人公ながら「おとめ妖怪ざくろ」もそれなりにDVDの売り上げが良かったのですが、これも主人公であるざくろが格好良かったのもあるのかもしれませんね。DVDしか発売されなかったので、普段はBDを買う男性層が買った可能性はあるでしょうけども。逆にBDの売り上げがそこそこ大きかったのにDVDの数字が出なかった「侵略!イカ娘」は男女関係なく楽しめる作品だとは思いましたが、アニメDVDを買う女性たちの購買意欲をそそるほどのものが無かったのはこの辺が関係しているのかもしれません。あのキラーコンテンツ化した「けいおん!!」でさえ、BDは3万枚超に対してDVDは4000枚程度と、売り上げ枚数自体はそれなりに高いのですが、禁書や俺妹、スタドラと比較するとそれよりも少ないんですよね。けいおんのグッズや原作コミックなどを買う女性ファンは多いのですが、映像として残そうというところまでは行ってないように思います。
 禁書IIや俺妹のDVDがそれなりに売れているのは、女性ファンがいるからではなく、とりあえず映像を残しておきたいor特典の描きおろし小説目当てな可能性もあります。が、俺妹の場合、2巻には描きおろし小説は特典として付いてこないんですよね。それでも一定以上DVDも売れているので、キャラコメなどの他の特典目当てな可能性もありますが、特典目当てだけでは無いのかもしれませんが、真相はよくわかりません。
 逆に、ハーレム系の主人公にあるのが「ヘタレ系」ですが、これは女性ウケするのかどうか定かではありません。
 むしろ、男性キャラがメインでなかった「探偵オペラミルキィホームズ」なんかは女性人気していて、DVDも結構数字が出ているんですが、想像をこえるカオスさがウケたのか、キャラたちがダメ可愛かったからかはわかりません。ゲーム原作は放送終了直前に発売されましたので、あまり原作ファンが……という感じではないので、かなり新しい形なのかもしれませんね。

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 こうやって売れるアニメを考えていると、かなりそのストライクゾーンが狭いことがわかります。要はアニメBD/DVDを買う人間は男女ともにごくごく限定的な層な気がするわけです。その「売れ筋」なところを狙うばかりの作品ではなく、もう少し幅広く「売れる」ようになればいいなと思ったりしていますが……もう少し安くならないと無理でしょうね。BD/DVDを売って制作費を回収するシステムはなかなか変わらないでしょうから。その中から、女性にもウケる要素を入れてくる作品が売り上げ的に上に来るようになると、ますますこの傾向は強まりそうです。
 今期であれば、明らかに女性からの反応がいい「魔法少女まどか☆マギカ」がありますが、これまでの売れるアニメの典型やミルキィホームズとは全然毛色の違う作品ではありますが、どう動くのかが非常に楽しみでもあります。

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