じょしらく最終回(13話)の締め方と演出が素晴らしい件

 2012年夏アニメで結局どれを一番楽しんだ? と言われると「じょしらく」だったかなと思います。水島努監督好きではありますが、それを差し引いても毎回楽しめたような気がしています。
 このじょしらくは、水島努監督×シリーズ構成横手美智子さんというイカ娘一期でもお馴染みのゴールデンコンビによるアニメでした。イカ娘はギャグではなくホームコメディものとしての色を強くした作品ではありましたが、このじょしらくは風刺やパロといった要素をかなり入れ込んだギャグ色の強い作品になっていたのではないかと思います。タブーはないのかと言わんばかりの政治家ネタや領土問題ネタ、アメリカネズミの話、さらには地震原発のネタなど、観ているこっちがヒヤヒヤさせられるようなものばかりでもありました(BS-TBSなどだと一部ネタがカットされていたりもしましたね……)。
 しかしながら、そんなネタも入れつつもグダグダしていた最終回Cパート(3ネタ目)の締め方が非常に印象に残りましたので紹介しておきます。

 マリーさんはマリーさんのままでいて、とかよくわからない方向に話が進んだ後、覆面(CV:悠木碧)に促されて高座へと向かうマリーさんです。

 楽屋から舞台裏に行き、そして高座へと上がるマリーさん。

 そして話し始めるマリーさんとそれを舞台裏から映す構図です。結構色んなモノが描かれた良いシーンではないかと思っています。

  • マリーさんのガチ落語の意味

 じょしらくといえば毎回入る落語と言えるのか言えないのかわからないような短い落語シーンですが、この最終回の落語はそれなりに長く落語をしています。内容も、最終回なので最終回と人生の最終回を掛けた落語らしい落語の出だしではなかったかと思います。
 この作品、マリーさんはじめ5人の女子落語家のゆるゆる(?)トークがメインというかほぼそれだけなわけですが、あまり二つ目であるマリーさんが敬われないというかそれほど先輩扱いされていませんが、同じ二つ目である丸京さんがマリーさんだけをさん付けで呼んでいることからわかるとおり、マリーさんが一番先輩だと考えられます。しかしマリーさんはいきなり酒は飲みだすし(ゆりかもめ内でとか)ダメな大人に見えるわけですが、この最終回の大トリをしっかり務めているわけですよ。しかも5人のゆるゆる楽屋トークが売りのこのアニメで、一人で大トリという意味は大きいですし、彼女が女子落語家メンバーの中でも「出来る子」であることが最後の最後に強調されていたようにも見えて凄く面白かったです。原作者の久米田康治さんは手寅を主人公だと言い張っているようですが、作品の中ではどう考えてもセンターでありレッドなマリーさんが主役ですよね。それも、あえてアニメ側からそうアピールしたかったのかなとも考えてしまいます。

  • 楽屋裏から観る落語姿と終焉

 アニメでは座席から落語をしている構図だったと思いますが(楽屋裏からの回もあったとは思いますが)、ここは楽屋裏からのアングルで正直見難いです。ただ、あくまでも彼女らを見やすいアングルから映していたこれまでからこの観づらい構図への変更は、彼女らと視聴者との距離を非常に感じさせる構図になっているのではないかと思うわけです。

 そして最後に、覆面が扉を閉めてマリーさんが見えなくなり終わり。この終わりが示すのは、女子落語家である彼女たちの日常というかプライベートな空間を我々視聴者が観ることを許される時間の終わり、なのではないでしょうか。
 僕らが観れるとするならば、末廣亭の高座に上がっている彼女らだけで、例えばメインである楽屋に入れるわけでもないし、市中に繰り出す5人に着いていったらただのストーカーなわけですよ。
 水島努監督作品では、日本の何処かにもしかしたらいるかもしれない(けど強烈な非現実的な要素が存在するのであり得ない)ようなキャラたちを描くことが多いのですが、じょしらくももしかしたらいるかもしれない存在ですよね。ただし楽屋という他からは遮断された空間でほとんどの話が進むという。それ自体を観ていることが非常に非現実的でアニメだからこそ観れる、ということではないかと思うわけです。そしてそれが閉じられることがその非現実的な時間の終わり、ということと掛けた締め方だったような気がするのです。
 水島努×横手美智子だったイカ娘最終回ではほのぼのとした各話から割と大きく動かす展開でハッピーエンドでしたし、ギャグ色の強かったアザゼルさんではクソと共に散った最終回でしたし、コメディものでの最終回の引き出しの多さはなかなか凄いように思うのですがどうでしょうか。

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 マリーさんが落語で最終回と人生の最終回と語って締め、更に覆面が扉を閉める。2つの「しめ」が効いたじょしらく最終回、お後がよろしいようで。