「たまこまーけっと」と「いなり、こんこん、恋いろは。」から考える京アニと角川の関係性

 来年1月から「いなり、こんこん、恋いろは。」のアニメがようやくスタートします。この作品は本当の伏見稲荷大社をモデルとした原作だそうで、アニメでも京都市と大々的に協力して京都発のアニメとして公式のイベントをやったというニュースもありました。
http://www.lisani.jp/news/id70125
 そんないなり、こんこん、恋いろは。(以下いなり)ですが、ふと気になることを思い出します。それは同じく京都を舞台に京都アニメーションがオリジナルアニメとして放送した「たまこまーけっと」(以下たまこま)です。こちらは同じ京阪本線沿線でも出町柳駅近くにある「出町桝形商店街」をモデルとして作られたアニメでしたが、登校するときの街の風景や登場する駅の描写などは京阪本線藤森駅周辺が描かれていました。どういうことかと言うと、出町柳近くにある商店街がモデルなのにわざわざ藤森を使ったのって何か変じゃないですか? ということです。というのも、藤森って出町柳までは10駅ほどあるんですが、伏見稲荷までは2駅でしかないんですよね。もちろん同じく伏見区ということでやたら近いわけです。
 ちなみにたまこまでは何故最寄りの出町柳ではなく藤森だったのかについては理由があります。1つは京阪の出町柳が地下駅だということです。地下駅ではどうしても見映えしませんし、街の風景とも分離されてしまいますから地下駅な出町柳が選択肢になかったこともあるように思います。学校が聖母女学院をモデルにしているからというのもありそうですが、出町桝形商店街近くには歴史ある校舎の同志社女子もありむしろそっちがモデルにならなかったのが不思議なくらいだったので、後付けの可能性があるのかなあとも思ってました。一番理由としてありそうなのが、街の風景が作品世界と合いそうだったからということでしょうか。出町柳周辺は学生の街でもあるし、普通の住宅街だと本当に普通の風景なんですよね。藤森周辺はたまこまをご覧になっていればわかるんですが、いかにも伏見の街並みなんですよね。それを使いたかったから藤森にした、というのが一番だろうとは思っているのですが。
 で、本題というかここからは妄想なんですが、たまこまで藤森が使われているのはいなりと関連があるのではないかということです。いなりは角川製作のアニメなわけですが、角川製作でご当地アニメといえば京アニ制作の「氷菓」がありました。作中で明言していたかどうかはちょっと覚えてませんが、風景とか街はそのまんま飛騨高山を描いており、放送終了後にも声優さん参加のイベントをやったりして聖地巡礼するファンを多く集めて成功しています。で、1年くらい前にいなりのアニメ化が発表された時にはにわかに「京アニか?」という声が上がりました。結果的には違ったのですが、氷菓から2年弱という放送のタイミングを考えると、氷菓の頃には話があったとしても不思議ではありません。
 なので、先行して藤森の背景素材を作っておいて、でも角川と京アニがどこかで決裂してしまって、藤森周辺の背景素材のみが残ったのでたまこまに流用したという考えです。予算のこともありますし、京アニは過去にもCLANNADけいおん!で似たような地域を背景素材として利用していたという前例もあるわけです。可能性として無くは無いと思います。
 とはいえ、タイミング的にはあまりにもたまこまが早いですし、いなりのアニメ化発表からたまこま放送までの期間が短すぎます。途中で制作が変わったにしてはいなりのアニメ化企画進行中と判明した11月末から放送開始までは1年ちょいと言うことで他のアニメと比較してもさほど長期間でもありません。となると特に京アニと角川がモメたとかそういうことは考えにくいと言えるかなあと思います。
 となるとこの両者に関係がある可能性として考えられるのは、京アニでやりたかったけどやれなかったのはたまこまが先にあったから、なのではないかと考えています(また妄想レベル)。京アニと角川だと「日常」はともかく「氷菓」については聖地アニメとしても小説原作アニメとしても一定以上の成功を収めており、氷菓からのラインでまた京アニが角川とタッグを組む可能性を消したとは、京アニの立場からするとちょっと考えにくいと思います。京アニはオリジナルかあるいは自社で行っている大賞から出版された小説を原案としたアニメを作る路線を進めていますが、正直持ち玉がいつまで続くかという状況です。なのでその路線に限定してしまうのはかなりリスキーです。とすると角川と縁を切ったとは個人的には考えにくいと思います。
 そうなると考えられるのは、角川がいなりのアニメの話を持っていったタイミングでは既にたまこまの企画がかなり進んでいて、出町柳や藤森を舞台にしたアニメを作っているのに伏見稲荷が舞台のアニメをまた作ることを避けたのではないでしょうか。たまこまは舞台となった場所が京都にあっただけであまり京都が舞台であることは意識していないような作りでしたが、いなりのほうはタイトルにあるように伏見稲荷が舞台であることを明言しています。なので、余計に京アニが引き受けづらかったのではないかと思うんですよね。
 間違いなく話は行ってたと思うのですけども……何となくまだいなりアニメが京アニじゃなかったからと言って京アニと角川が切れたと考えるには早計だと思っています。
【参考】「京都アニメーションと角川書店の関係は切れたのかどうかを考えてみた」(過去記事)
 ちなみに、「いなりこんこん、恋いろは」とたまこまーけっと劇場版の「たまこラブストーリー」で何故かどちらも恋愛方面押しなのも偶然でしょうけども……何か勘ぐりたくなりますね(汗。

たまこまーけっと (KAエスマ文庫)

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