麻枝准脚本新作アニメ「Charlotte(シャーロット)」に対する不安と期待

 「CLANNAD」や「Angel Beats!」などを送り出したKey所属の麻枝准が脚本(と音楽・主題歌)を手がけるオリジナルアニメ「Charlotte(シャーロット)」の放送日が近づいてきました。「元」鍵っ子かつ麻枝信者である自分にとっては楽しみでしかないんですが、同時に今度も話題になって商業的にも成功するのかどうか……と考えると正直不安な面も結構あったりします。
 今回はその点について色々と考えてみたいと思います。

  • 不安その1〜KeyもAB!も過去のものになっている?/目新しさが無くインパクト不足?

 実は一番気になっているところだったりします。
 AB!が放送されてから早5年が経過し、ようやっとゲームが出るそうですが、既にKey(鍵)のコンテンツが過去のものになっているのではないか? と危惧しています。AB!の頃でもCLANNADのゲームが発売されてから相当経過していたわけですが、京アニこと京都アニメーションがKey作品をコンスタントに世に送り出していた頃でもあり、それらが着実にヒットしていたことでKeyとか麻枝准という名前だけで相当なインパクトがあったと記憶しています。まだ、そんなKeyの麻枝准が、初の全話脚本のオリジナルアニメを作る! ということのインパクトだけでもかなりの話題性を生み出していました。ところが今回は2回目です。そしてKey作品の鮮度も、「リトルバスターズ!」のアニメはありましたけど原作ファン以外にはあまり浸透すること無く終わったことで、アニメファンの間では過去のものになってしまっているようにも感じるのです。要するにインパクト的なものが全くない、ということにもなってしまっているわけです。
 これで、AB!の時と違う要素がスタッフィング周りにでもあればまだインパクトが生まれたと思うわけですが、制作は同じP.A.WORKSで、監督はAB!の時に各話絵コンテを担当していた方。声優さんこそ当時から一世代若返ったような印象ではありますけど、それほどインパクトがあるわけでもない。
 AB!当時よりも全然宣伝をしていないというか盛り上げが足りない感じもありますけど、その理由として大々的に宣伝出来る要素が見当たらない、というところもあるのかもしれません。いずれにせよ、アニメ放送前のスタートラインとしてはAB!よりもずいぶんと後ろのように感じています。オリジナルアニメ好きな自分からすれば全く問題ないんですが、その点ではやや不安に思っています。

  • 不安その2〜ギャルゲーライターのオリジナルアニメがことごとくヒットしない現状

 今期、「パンチライン」と「プラスティック・メモリーズ」というオリジナルアニメが放送されていますが評判が芳しくありません。この2つのアニメには共通点がありまして、どちらもギャルゲーのシナリオライターとして名を上げた方が脚本を手がけています。パンチラインのほうがゲームライターっぽい(ループものの)シリーズ構成なのかなあという気がしていますが、どちらもいわゆる「面白いアニメ」としては程遠く、評判が上がってこないのも頷ける出来になっているように感じます。
 ただゲームライター出身の脚本家が手がけるオリジナルアニメはほとんどヒットしていません。Keyで麻枝准とともに「Kanon」を作った久弥直樹が全話脚本を手がけた「天体のメソッド」を始め、「世界征服〜謀略のズヴィズダー」など、いわゆる爆死アニメが累々と連なっています。「魔法少女まどか☆マギカ」の虚淵玄さんでさえ、シナリオ原案という形での参加ではありましたが「アルドノア・ゼロ」はイマイチな結果に終わりましたし、「結城友奈は勇者である」あたりはまずまずヒットしましたが、ゲームライター出身のタカヒロさんはあくまでもシナリオの原案というクレジットで、岸誠二監督やシリーズ構成の上江洲誠さんがそこから大幅なブラッシュアップをしてようやくあの形になった、という話でした。
 そうした流れで作られるのがシャーロットですから、ちょっと期待しづらいのかな、と考えてしまいます。というか、そもそもこれだけギャルゲーライターをアニメ脚本に登用する流れを作ったのが当の麻枝准のAB!なのでしょうし、アニメで通用するのは麻枝准だけがなのか、あるいはギャルゲー的な(ギャルゲーライターが作る)作品構造がアニメで受けなくなってきているのかが、シャーロットの評判で測れてしまうようにも考えられます。。

  • 不安その3〜キャラクター数を絞ったことへのマイナス面

 AB!での反省点を踏まえてだったような気がしますが、シャーロットではキャラクター数を絞ることを早い段階で決めていたようなことを目にしました。実際に発表されたメインのキャラクターは少なく、わずか6人でした。実際にはもっとたくさんのキャラクターが登場するものとは思いますが、主人公が属するチーム(組織)のメンバーと言う意味ではAB!の時のように多数、というわけではなく、生徒会という割と限られた人数が想像できる組織が主人公の属するところということで、AB!の時とは常時出てくるキャラクターは少ないのでしょう。
 AB!ではキャラクターが多すぎる、という批判が一部からあり、そのことからシャーロットではキャラ数を絞ったとありました。確かにAB!はキャラが多すぎました。それ故に人気声優を起用したキャラなのに出番が極端に少なく、最後まで名前を覚えられないキャラが複数出てしまいました。ただ、果たしてそれが作品としての面白さを下げる結果を招いたか? と考えると、個人的にそれはない、と思ってます。もちろんキャラクター数がちょうどいい(掛け合いのパターンが適量)な作品のほうがより良い、とは思います。が、キャラを作りすぎて使い切れないことよりも、キャラが足りない(掛け合いのパターンが少ない)よりはいいとも思うわけです。というのも、いわゆる「日常系アニメ」でもう一つヒットしなかった作品の多くで、メインとして登場するキャラクター数が少なかったように感じるからです。AB!では、出番が少なくて不満が出るほどに多くのキャラのキャラメイクが良かった、とも言えますしね。
 なので、キャラクターを絞ったシャーロットがその辺、ちょうどいいキャラクター数になっているのか、視聴者側が楽しめるくらいのちょうどいい掛け合いのパターン数になっているのかどうか、このアニメがヒットするかどうかのポイントになるような気がしています。

  • 期待〜商業的な成功率10割の麻枝准企画作品

 これまで世に送り出されてきた麻枝准企画の作品は、この項目のタイトルにもあるように「商業的な成功率10割」でしょう。Keyに所属する以前のTactics時代から考えても、「MOON.」「ONE〜輝く季節へ」「AIR」「CLANNAD」「リトルバスターズ!」「Angel Beats!」とどれもヒット作や話題作ばかりで、かつあまり期待を下回らないという意味では非常に稀なクリエイターだと思ってます(ちなみに「Kanon」は久弥直樹企画で麻枝准はサブライター扱いです)。それぞれの作品の評判はともかくとして、これほど負け知らずなクリエイターは日本中探してもそういないと思ってます。アニメ化されてもヒットしましたし、AB!ではこれまで原作はあくまでもゲームだったところからアニメの企画からシナリオ、各話脚本まで自らが手がけるという野心的というよりは無謀な企画だったわけですが、それでも商業的に成功しましたし非常に話題にもなったわけです。
 じゃあ今回も、となるかどうかはわかりません。ですが、麻枝准には作品の企画とシナリオだけでは無い魅力があります。「音楽」への期待ですね。特に主題歌についてはCLANNADでもAB!でもアニソンとしては破格の売上だったということで、シャーロットの主題歌へも期待が高まります。AB!では、放送当時に同時期に放送されていた「けいおん!!」での主題歌や劇中歌とほぼ同レベルの売上を叩き出しました。シャーロットの主題歌はAB!と同じくOPをLiaさんが、EDを多田葵さんが歌うようですが、劇中歌は声優の内田真礼さんが歌うようで、AB!ではメジャーデビューする以前のLiSAさんが歌っていたのと比較するとどうなんだろう……? と考えてしまいました。LiSAさんもそうでしょうし、内田さんも麻枝准が選んでいるんでしょうし麻枝節が映えるボーカルになっているのだろうと思うのですが、歌唱を聴いてみるまではちょっと不安な部分ではあります。でもまあ、大丈夫なんだろうと思って待ちたいと思います。

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 と、ほとんど不安だらけでお送りしましたが、それでも僕個人としてはちゃんと期待して待っています。ただ、周囲の情勢とかが不安にさせてくれるってことでもあります。麻枝准は神格化しててもいいのかどうか、このアニメではっきりすることとなるとも思います。不安と期待、織り交ぜながら刻一刻と放送が迫っていることに何だか焦りすら感じてしまいますが、ワクワク感もあるので待ち遠しいですね。

TVアニメ「Charlotte(シャーロット)」公式サイト