「うたの☆プリンスさまっ♪マジLOVE1000%」がマジで面白い件

 今期も期待通りや期待以上のアニメがたくさんありますが、中でも視聴予定にはあまりなかった「うたの☆プリンスさまっ♪マジLOVE1000%うたプリ)」が想定外に面白いです。
 もちろん、1話冒頭で流れた「マジLOVE1000%」のインパクトが抜群ではありましたが、最初はそんな部分をネタとして興味本位で観ていただけだったのが、最新話の5話がほんと単純に30分が短く感じる楽しさで、アニメとして本当に面白く作られているように思ってます。乙女ゲー原作らしいのですが、乙女ゲー……まあ僕らで言うところのギャルゲー的な設定や流れは生かしつつも上手い構成にもなってるように感じました。
 さてそんなうたプリですが、どの辺が面白いのか、そして明らかに女性向けでありながら野郎の自分でも楽しめるのはどの辺なのかを少し書いていきたいと思います。

  • 主人公はあくまで可愛い女の子

 女性向けアニメというと女キャラが軽視されがちですが、このうたプリでは主人公である七海春歌があくまでメインというか主役です。彼女の葛藤とか過去話、資質や性格なども非常にしっかりと描かれていて、ちゃんと可愛いと思います。そして彼女の視点を主にして話が進むので、一対一の関係性が非常にわかりやすく描かれていると思います。
 乙女ゲー原作だからなのか、彼女がヒロインたち(この場合メインの男キャラたちです)を攻略していくような流れも当然あるわけですが、主人公が頑張る姿にヒロインたちが惚れる、あるいは好感を持つということを基本的に描いていますが、ちゃんとヒロインたちが主人公を好きになるところに説得力があるんですよね。可愛いので。そこがしっかりと描けているのでブレないし、男から観ても面白く見える部分なのかもしれません。

  • 主人公の無知さと視聴者とかシンクロ出来る設定

 主人公の春歌は、家にテレビが無いとかというかなり無茶な設定で、この学校がどんななのかをほとんど知らずに入学してきたり、芸能人とかそういうものも全然知らなかったりととにかく無知なんですが、そこが視聴者側とシンクロしてるんですよね。その世界では超有名人だったり常識かもしれないけど、僕らには何もわからないわけで。それを春歌が無知なことでいちいち説明してくれるので、この作品世界の知識を春歌と一緒に知れているんですよね。だから、教師陣がスーパースターたちという先入観もないですし凄い学校という認識もない(1話の校長の登場の仕方とか見てれば普通の学校ではないのは一目瞭然ではありますが)視聴者とも同じ位置にいるわけで。教師が現役の俳優さんということも、その後の話の中で出てきて初めて知るというタイミングも同期できますからね。まあ当然の作りだと言われるとそれまでですが、置いてけぼり感が無くていい作りじゃないかと思ってます。

  • 縦も横も掘り下げている構成の良さ

 特に5話を観ていて感じたんですが、1話の中の構成が素晴らしいですね。1話でヒロインたちがとりあえずどんなキャラなのかを表面上だけ描いておいてあとは各キャラの個別回が続く感じですが、その個別回でも対になるキャラとの関係性は深く掘り下げて描き、対にはならないキャラは仲が深まる様子だけ軽く描く感じで、非常に縦と横の描き方のバランスが素晴らしい印象を持ってます。個別回のメインキャラが一番深く掘り下げられるのは当たり前なのですが、個人での思い出とか葛藤やキャラを形作っていったものの描写と、対になるキャラとの関係性、そしてそこから頑張る主人公が建てていくフラグ……と、この3点が非常にバランスよく描かれているので、個だけが浮くことがないんですよね。個人的には、対になるキャラとのエピソードや主人公に思い入れを深める流れの自然さというか説得力の強さこそがこの作品の面白さの核ではないかと観ています。対になるキャラとのエピソードは当然BL好きへのエサの部分ですが、ここを必要以上にBLであることを濃く描きすぎていないあたりのさじ加減も絶妙だと思います。また主人公への思い入れの部分も、恋愛感情までは行ってなくて信頼が深まった程度で留めてるあたりも、急展開にもならず、かつこれまで主人公がフラグを建ててきたキャラとの関係性も維持されたままでいられる部分だと思ってます。
 これらに加えて、キャラソンを歌う展開も1話に含めているんですから、よくもまあ30分弱にこれだけの要素を入れて不自然さを感じさせないなあと感心しきりです。

 1話のマジLOVE1000%を歌う場面はもちろんですが、4話冒頭の振り付けの練習をしてるシーンのコミカルな動きとか、5話の先生が出る映画の映像とか、主人公とヒロインのフラグが立ったところでの妄想シーンなど、映像的に面白くしかもアニメーションとして非常に力が入ったものになっているあたりが、観ていて目で楽しめるんですよね。淡々と進んでいるだけではなく、それらが非常にアクセントになっていて面白く感じます。そしてそこには制作側も相当気合を入れてるのがわかるあたりも楽しいですね。ニコニコ動画のコメントは観てないんですが、単純にネタ的な意味としても、演出の面白さ的にも両方とも成立してるあたりは非常に上手く作られている気がしています。

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 とまあ褒めまくりましたが、序盤で出てきた「歌い手と作曲者のペアを決める」というゴールと、マジLOVE1000%が実現するためのゴールが一致していないあたりが気になります。これだけフラグ立てまくってるわけですが、誰か1人だけを選ばないといけないようになるのであればどういう締め方になるのかとかはギャルゲー原作アニメでも課題なわけで、同じような懸念がこのうたプリにもあると思います。主人公の性格が繊細なのも気がかりですね。徐々にこの辺は改善されてきてる気はしますが、終盤に主人公力を発揮して「みんなまとめて面倒観てやんよ!」って感じにまではなりそうもないので……。
 最終的には教師陣の誰かを主人公が取り込んでしまい、1人で6人をプロデュースするような流れになる気はしています。完全逆ハーレムは多くの人が望む展開でしょうが、それ以上の何かにも期待したい気はしています。



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