甘酸っぱい思春期少女を描いたら非エロでも天下一品!かつエロスな、長月みそか『少女素数』


 長月みそかさんといえば、商業誌でも同人でも○学生同士の18禁マンガで以前から見知った存在で、エロもなかなか素晴らしかったんですが、少年少女の心の動きや絡み、葛藤などが非常に細やかに描かれていてて、純愛も、三角関係っぽい関係も、片想いで報われない恋心も、描写がその辺のエロ漫画家とは一線を画していました。
 しかし最近はエロ漫画で見る機会が無く、どうしているんだろう……とも思ってもいませんでしたが、いきなりメロンブックスの店頭で再会することになってしまいました。しかも平積みで特典ありという大々的な売り方だったので、これは……と思い買いました。
 良いですね! 思ってた以上に、と言うか、読み進めて行くうちにどんどん面白くなってきました。

 表紙から見ると、二人の少女の百合ロリマンガかとも勘違いしそうですが、そんなことはありません。もちろん、ロリ百合も一つの構成要素ですが、この双子少女とその兄とを中心とした描かれる人間関係こそが、このマンガでの最大の見所と言うか、このマンガの全てと言って良いでしょう。
 一応は、ヒゲで造形師の歳の離れた兄が主人公で、その目線から、ヒロイン?である双子少女とその周辺の人間関係を、思春期ならではの甘酸っぱくも切なく描いていると言うのが、だいたいの内容です。
 そして詳しい内容は……それこそ、エロでの氏の作風そのまんまですね。いや、エロが無い分、エロ以外の部分を緻密に描けるためか、氏の良さが非常に濃く出ています。何が良いかと言うと、明るい光の部分ばかりを描いているわけじゃないんですよね。もちろんそういう微笑ましいエピソードも織り込まれていますが、見所は逆に、影の部分と言うかすれ違い、あるいは少しぶつかってしまうところやすれ違いの感情が発生してしまう部分ですね。その辺はエロでも描かれてはいたのですが、エロを成立させなければならないという制約がなくなったことからか、以前よりも断然濃密に、切なさ満点で描かれてます。その部分だけでも美味しいし心痛みます。要は、明の部分も暗の部分も並立させているあたりが、絵柄の明るさといいバランスになって展開されているので、心地よく読めるんだと思ってます。

 ちなみに、露出はそれほど多いわけでもないですし、直接的な表現も無いにも関わらず、何処かにエロスを感じてしまうんですが、どうしてなんでしょうか? 僕が長月みそかさんをエロ漫画家として補正をかけて見てしまっているのか、あるいは描写ひとつひとつにそれを匂わせるような仕掛けがあるのか、あるいは作品全体に暗にテーマとして込められているのか……。もしかすると、性的なものを醸し出していると言うよりは、性的なものを「隠していない」のかもしれません。何処かに「記号化されていない」生っぽいキャラクター同士の絡みがそう感じさせてくれるのかもしれません。
 絵柄ですが……まあエロ描いてた頃の作者の作品を見ていれば「?」って思う部分はあるかもしれません。基本的に絵はあまり変わっていないのですが、主線が濃くなったような気がします。あるいは描き方なのか描くツールの違いなのか。なので、それが強いクセとなって顕れている気がしますが、他にはない味とも言えますし、とにかく絵は綺麗と言うか丁寧ですごくこなれているので、パッと見で慣れない人でも大丈夫だと思います。

 これは良いですよ。「……はつめちゃん」などとは全く別ベクトルですが、真性のロリ・少女好きや双子好きには特にオススメしたいです。個人的に、5巻くらいまでじっくりやって完結してもらいたいと思います。

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<追記>
 長月みそかさんは、既に「HR」という4コママンガで単行本を出されていたんですね。それから今回の少女素数までは間が空いたようですが。補足しておきます。

長月みそかさんのブログ
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