キュゥべえとほむらの対立点とそれぞれの正義とは?〜魔法少女まどか★マギカ3話まで考察

 魔法少女まどか☆マギカの3話まで観て、依然として黒幕説が消えるどころか、そもそも「魔法少女になる」ということのリスクの大きさを伝えていないキュゥべえが、魔法少女になることを勧めていることでラスボス説まで出てきているのですが、個人的には、怪しいと言われ続けたマミが白だったこともあって、現時点で嘘を付いているキャラはいないと思っています。
 しかしながら、ほむらがまどかを魔法少女にさせたくないことや、そしてその延長線上でキュゥべえとまどかが接触することを恐れていたり、マミに対しても敵意を見せているなど、キュゥべえサイドのまどかへの魔法少女勧誘をことさらに嫌っています。ですが、ほむらはマミに対して攻撃を仕掛けてきませんし、マミが殺された場面でも喜んでいる素振りは全く見せなかったどころか、拘束が解けた意味を知ったときに「まさか」と言っていますので、負けて死んでほしいなどとは思っていなかったものと思われます。それに、マミに対してこの魔女の力が強いことを伝えていたり、自分が倒そうとしていたりと、むしろその魔女の脅威について伝え、自らが危険を冒してまで魔女と対峙することを告げています。マミが言っていた「魔女の取り合い」の要素も無くは無いですが、結果的にマミは殺されてしまうわけで、ほむらの忠告が正しかったという結論になってしまうわけです。
 魔女の成り立ちについても明らかになってきました。魔女は、魔女が生み出す「使い魔」が成長パターンと、グリフシードが発芽して魔女になるパターンとあるようです。そう考えると、そもそも魔女の源は魔法少女で、魔法少女が生み出されなければ魔女が増えることはない、ということにも繋がります。

  • ほむらの狙い

 ほむらが魔法少女を増やしたがらないことが理解できてきますよね。魔法少女さえ増えなければ魔女は増えないのですから。彼女の標的がキュゥべえだけなのかどうかわかりませんが、魔法少女へのスカウト係のキュゥべえを攻撃していたのは、魔女の卵をこれ以上増やしたくないのと関係はあるでしょう。そして、まどかが魔法少女としての素質が高いこともほむらは知っているのにそれをさせたがらないのは、魔法少女として協力して戦うつもりがない可能性と、いずれ殺されて魔女になりほむらにとって脅威になってしまう可能性と両方あるんじゃないかと思います。
 そう考えると、やはり魔女化してしまう魔法少女を増やそうとしているキュゥべえの存在は「悪」になってしまうんですが、そうとも言い切れない部分があるんじゃないかと思うのです。

 キュゥべえは、1話冒頭の夢のシーンで世界の危機をまどかに見せ、魔法少女になることを誘導します。魔法少女がほむらしかいなくなり、その最後の頼みの綱のほむらでさえやられてしまうことで、世界が終わってしまうことを伝えるわけですが、そのラスボスが誰かは伝えていません。
 恐らくはほむらもキュゥべえも、まどかが魔法少女になった/ならなかった未来を知っている可能性があります。ほむらがまどかの魔法少女化を恐れているのは、まどかが魔法少女になった未来が悲惨なことになることを示していると思います。しかしながら、キュゥべえがまどかを魔法少女にしたがっているのを観ると、キュゥべえキュゥべえで、まどかが魔法少女にならなかった未来が悲惨だということを知っている可能性も出てこないでしょうか?
 どちらの未来も知っている可能性もあり、世界を崩壊に向かわせている可能性も否定はできませんが、キュゥべえキュゥべえなりに、魔法少女がほとんど倒されてしまう未来を知っていて、対処療法的に、あるいはその潜在能力からジョーカー的なまどかを魔法少女にスカウトしたがっている、というのも可能性としてはそれなりにあるでしょう。
 問題は、まどかが魔法少女になることが世界の崩壊に繋がるかどうかを知っているかどうか? でしょう。その未来をキュゥべえが知っているなら、まどかを魔法少女にスカウトすることで世界を壊そうとしているということになります。ただ、無茶苦茶になってしまう未来像を見せて魔法少女にスカウトして、実は世界を壊すためだった、というのはあまり筋が通らないんじゃないでしょうか? となると、知っているのなら「世界を壊すことで、キュゥべえ自身か、別の世界が救われる」からまどかを魔法少女にスカウトしていることになります。まどかが魔法少女になって世界が壊れる未来を知らないのであれば、魔女が頻出するのを止めるための切り札的な意味で、まどかを魔法少女にしたがっていることになります。
 これであれば、絶対悪とまでは言えないと思いますし、キュゥべえキュゥべえなりの最善策だと思って、まどかをスカウトしているのだと考えられます。

  • 推論として……ラスボスが「もう1人のまどか」であったならば

 EDアニメの検証のところで、まどか自身がラスボスである可能性を考えてみました。これは、魔法少女としてはかなり強い部類に入るであろうほむらが負けてしまうくらいの力を持った相手、と考えると、キュゥべえから高い素質を見込まれているまどかが魔女化したものなのか? という変な妄想から出てきたものですが、ラスボスがまどかであるのなら、ほむらもキュゥべえも、それぞれの行動に説明が付く部分があります。
 ほむらがまどかに魔法少女にならないように言ってるのが、まどかが魔法少女になったために殺されて魔女になってしまって、しかも能力が高いので手に負えないから、魔法少女化を阻止しようとしてる、なら主張としては通りますよね。こちらはわかると思います。
 では、キュゥべえはそれでもまどかを魔法少女にしようとしているのは何故でしょう? キュゥべえも将来の敵がまどかが魔女になってしまったものだった場合、同じことを繰り返すようなことをするのは筋が通りません。ならどういう考えなら筋が通るか? と思えば……「もう1人のまどか」というのはどうでしょうか?
 EDアニメのまどかがあまりにも主人公っぽくは見えなかったのもあるのですが、「もう1人のまどか」って実は出てきてるんですよね。OPの変身シーンの大人まどかです。Kanon川澄舞のように(古い話で申し訳ないですが)、自身の力だけが分離して、意思を持って暴走するパターンみたいなものを想像しました。
 というのも、そもそもこの作品のタイトルが「魔法少女まどか☆マギカ」なんですよね。「魔法少女」モノと言えば、リリカルなのはであったり「カタカナ+名前」というパターンが多く、カタカナで名前を修飾するようなタイトルがほとんどのような気がします。が、このまどマギに関しては「まどか☆マギカ」であり、直訳すれば「まどか☆魔法」となり、特に修飾されているわけでもしてるわけでもありません。むしろ「まどか」と「魔法」が並列の関係とも取れます。他の方の意見では「魔法少女」と「まどか☆マギカ」というのが鏡のような関係になっているのではないか? との指摘がありましたが、確かに「まどか=少女」ということもあり、頷ける話でもあります。苗字と名前を入れ替えても成立するキャラクター名が多い、というのもあり、名前を入れ替えるだけで別の自分が発生する、という示唆にも繋がってくるように感じます。
 「もう1人のまどか」がラスボスであるならば、キュゥべえもほむらも行動の意図が理解できます。キュゥべえは、そんな強大な「もう1人のまどか」と対峙できるのはまどか自身しかいない、という理屈でスカウトするわけです。ほむらは逆に、自分だったものと対峙させるなんて……となり、まどかが魔法少女にさえならなければ自分だったものと戦うことにはならない、という理屈で魔法少女化を阻止しようとする……となりますよね。

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 最後はまあ推論ですが、キュゥべえはいくらでも悪役に出来るとは思うのですが、今時「絶対悪」な存在を作り出すのかな? と疑問に思いました。絶対悪を作ってしまえば、憎しみがそちらに集中してしまうので、話全体の悲壮感みたいなものがあまり作り出せないような気がするからです。それよりも、この話の流れからすれば、身内の、しかもとんでもないところから敵が現れるほうが面白くなりそうな気がするのです。それが、僕の予想のまどかなのか、あるいは1話で「変身シーン」があるまどかのママなのかはわかりませんけど(その二択?)。なので、キュゥべえが悪役というのは、あまりにも分り易すぎるのかな? と思っています。
 この考えが当たっているのかどうかわかりませんが、いずれにせよ、この2人の動きには今後とも注目かと思います。

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『魔法少女まどか☆マギカ 3話で流れたEDアニメーションの意味と意図とは?』

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