イカ娘2期(侵略!?イカ娘)に感じる違和感の正体とは?

 1期観て原作もBDも買ったイカ娘のアニメ2期となる「侵略!?イカ娘」が始まり1ヶ月以上が経ちました。当初は凄く面白く観ていたのですが、例のレディオ体操回を観ててふと全部を楽しめてない自分に気づきました。まあ関西では、イカ娘の前にFate/ZEROが、イカ娘の後にベン・トーがあるというなかなか面白い2作品に挟まれてる感があるわけですが、それを差し引いても、あまり実況も進まなかったりと盛り上がってこない感じがします。
 水島監督が総監督になり山本靖貴さんが監督になったわけですが、山本靖貴監督は1期でもキーとなる回で絵コンテや演出を担当していたり、BLOOD-Cでも水島監督とコンビを組んでいたりなど、1期イカ娘&水島監督の理解者ではあるはずなんですが、それでも拭えない違和感は何処から訪れるのでしょうか。今回はそれを検証してみます。

  • スフィアOP起用の問題

 個人的には、一番流れを悪くした原因じゃないかと思っています。曲調はともかく、スフィアとイカ娘をつなぐものは、スフィアが主題歌歌う作品の伊藤かな恵さん起用率が高いことやランティスが音楽制作を担当していることはあるんですが、そこまでなんですよね。むしろ、「花咲くいろは」や「おとめ妖怪ざくろ」「あそびにいくヨ!」などの過去のスフィアが主題歌を担当したアニメでは、スフィアのメンバーが主要キャラや脇キャラで複数起用されていましたが、イカ娘においてはそれがないんですよね。
 そもそもスフィアのアニメ主題歌は、作品にジャストフィットしているとは思えません。一応アニメには合わせているのですが、それ以上にアイドルPOPユニットとしての曲調を優先しているように聴こえます。現に、作品の人気とスフィアのCDの売れ行きはあまり連動していないので、アニメからスフィアのCDを買うという流れも出来ていないように感じます。
 ましてやイカ娘には、豊崎愛生さんも戸松遥さんも、寿美菜子さんも高垣彩陽さんも起用されていないわけです。多少イカ娘に寄った(と言うよりは、スフィアがイカ娘に媚びたように聴こえた)くらいでは、これがイカ娘の主題歌とはとても馴染めないように思ってます。ましてや2期です。1期でも担当していたのなら全く問題ないわけですが、2期でいきなりの起用ですからね。イカ娘ファンとしてはいきなり割り込んできた感じかしません。
 ここまで考えてる人はそれほどいないかもしれませんし、だんだん慣れてきたのもあるんですが、慣れたというだけでこれがベストな選択だったとはとても思えませんのでいい選択ではなかったですし、スタートに失敗した感が強いです。OPアニメは1期と同じく追崎史敏さんですが、曲に合わせてややイカちゃんの可愛さをあざとく描いているような感じがするのも「ちょっと違う」感じに映ってしまうのかもしれません。

  • 各話の傾向が「可愛い」「ゆるい」に偏った?

 ここまでの話を振り返ると、どうもイカちゃんが無垢で可愛い系の話が多いように思います。逆に言えば、爆笑系のお話が少ないと言うか。まあ1期で爆笑出来た話がどれだけあったんだと言われると答えにくいのですが(千鶴の血を採取しようとする三バカ回とか面白かったと思うんですが)。アレックスと散歩をする回とかアリを追う回とか、ブラックタイガー号と共に海に行く回とか、そういう話が中心になっているように思います。これは、1期で傘回とかを担当した山本監督の好みもあるんじゃないかと思うのですが、比重としてはそういう話が多いように思います。爆笑を誘えないということは、総じてお話がゆるいんですよね。別にイカ娘の原作がそういう傾向でもありますし、1期でもそういう雰囲気はシリーズ通してあったのでわからないではないんですけど、原作のイカ娘がゆるさが目立ってしまっていたことを考えると、1期の構成がバラエティに富んでいて良かったんじゃないか? とも思ったりしています。ということは、2期の構成が原作寄りなのかなあとも思いますがどうでしょうか。

  • 監督変更の問題

 シリーズ構成は1期から引き続いて横手美智子さんなので変わらないはずですが、やはり代わってしまった監督に目が行ってしまいます。クレヨンしんちゃんスタッフで、初監督作品もクレしんの劇場版だった+アザゼルさんでもわかるようにギャグアニメには定評がありすぎる水島努さんに比べると、2期監督の山本靖貴さんはギャグ方面の経験がなさすぎるのが気になると同時に、水島総監督と比較するとネタの引き出しの数に相当差があるのではないかと考えてしまいました。
 山本監督がイカ娘アニメのレイプをしているとはとても思えませんし、むしろ1期や原作の雰囲気を引き継いでいる感は強いのですが、どうしてもイカ娘という作品の一面……とまでは言いませんが、少ない面だけしか生かしきれていない感がしてしまいます。そもそも、1期が原作イカ娘が持ってる要素にない面白さをいくつか示してくれたのですが、2期は原作ベースの面白さしか感じない気がするのです。
 例えば、1期の5話でミニイカ娘回を持ってきたり、その後の6話で能面ライダー回で思いっきり変化球投げてきたり、10話は早苗禁断症状回の後に「おおふり」スタッフを引き連れてのガチの野球回と、ところどころで非常に印象的な回を放り込んできたり、力の入れどころが違う気がしながらもそれがとても面白いし原作やここまでのアニメシリーズからすると変化球にもなってるような回を効果的に入れてた気がするんですが、2期はそういうのがあまり感じられないんですよね。面白い回とあまり面白くない回、くらいの変化はあるのですが……。この辺は、水島総監督と山本監督との差ではないかと思うんですが。

  • イカちゃんの可愛さへの「慣れ」

 個人的には、1期は意味不明なイカちゃんの可愛さがとにかく凄かったと思うんですが、2期までに原作を読み、アニメもBDで観返しましたし2期放送直前のBS-JAPANでの再放送も全話観たこともあってか、イカちゃんが可愛いっていうことに慣れてきた気がしたんですよね。まあこれは僕の個人的な2期に望むにあたっての勝手な状態ですが、1期放送前のまっさらな状況で見せられたイカちゃんの可愛さと、1期完走後に改めてイカちゃんを観た時の可愛さでは全く異なると思います。そうした状況の違いこそが印象の違いに繋がるような気がしてます。
 イカちゃんが可愛いのは引き続いてますし、2期で1期で可愛かったところをレイプしてるとはとても思えません。むしろ、1期で可愛いと感じた部分をより繊細にかつ綺麗に描いていると思います。が、1期で提示された可愛いと思う部分や方向性とは異なる方向性での提示が無いんですよね。だからこそ、この部分を強調して描いている(気がする)2期に物足りなさを感じてしまうんじゃないかと考えています。

  • 1期で原作の良いところを使い切った?

 イカ娘アニメは、2期のディオメディアからのニコニコ生放送でチラッと映った絵コンテから、原作最新巻のエピソードも盛り込まれているようですが、1期も原作のかなり新しい巻からのエピソードがアニメ化されていたように、原作で描かれた新しい話までを含めた中から、アニメにして面白くなりそうなエピソードをチョイスしているように感じます。
 1クールアニメだと、マンガ原作換算だと最適なサイズは4〜5巻だと思います。なので、現在10巻まで出ているイカ娘だと1クール×2期は尺としては合ってるのだろうと思います。例えば、Aチャンネルだと原作2巻しか出てないのにオリジナルエピソードとかで足して1クール作りましたし、けいおんは原作2巻までで1クールで2期は原作2巻ながらもほぼアニメオリジナルで2期の2クールを作ったりと、日常系の漫画原作アニメでは尺伸ばしは普通のことですし、イカ娘でもアニメオリジナル話がかなり入っているのでむしろ原作10巻もあるなら余裕だろうと思うのですが、個人的にはそうはなっていない気がしてます。
 むしろ、1期アニメで原作の7,8巻くらいまでのエピソードの中から面白いと思う話をドラフトのように選んでいったという逸話もあるように、その時点での原作の面白そうな話を軒並み使い果たしていたのかなと思うのです。1期は原作8巻くらいまでの話からのベスト選+1話分には足りない話を複数話ジョイントして濃くしていた+意図的に緩急をつけた構成が面白かったと思うのですが、2期は8巻までは1期で選ばれなかったエピソードしか使えない+アニメ1話に原作3話くらいのジョイントはしていない(気がする)+話の方向性がやや偏ってる……となると、やはり1期と比較すると見劣るような気がしてしまいます。
 もちろん、原作は1期終了後も連載されていましたし、そこから出てきた9,10巻はむしろどんどん面白くなってきているんですが、イカちゃんが中心ではなくなりつつある気もするんですよね。でもアニメはイカちゃん中心でないと面白くなかったり、どうしても他のキャラが立ってこないとかあるのですが、原作でイカちゃんの新たな魅力の提示とか、作品の別ベクトルでの面白さの提示があまり無かったようにも感じました。新キャラも主要キャラとしては出てきてませんしね。この辺の新鮮味のなさとかも、アニメ2期で驚きを感じない理由にもつながっているような気がしています。この部分に関しては、イカ娘の原作力の限界なのかな……とも感じてしまってます。そもそも原作は微妙だけどアニメは面白かった、っていうのが1期イカ娘での大方の感想でしたし、アニメBDの売れ行きの良さと原作コミックスの伸び悩みの理由でもありましたから。

  • エロさは要らなかった

 2期イカ娘で気になったのが、割とエロさを出しているのかなと思う部分でした。清美の友達のおっぱいの子(望月さん?)の乳揺れなどは1期では描いてなかった気がするような部分ですし、あまりその辺を強調しない方針だった1期から考えると意外な気がしました。
 OPアニメでも、山本靖貴監督のクレジットが出るところでイカちゃんの白スク水姿のおしりがアップになるなど、ややエロさを意識しているような部分があるんですが、これってあまりよろしくない気がしました。本編ではさほどエロさを強調しているようには見えませんけど、1期イカ娘で良かったのは性的な部分での可愛さを全く感じなかったからこその可愛さだったと考えていましたから、2期で少しでもエロさを強調させるような仕掛けは微妙に映りました。

                      • -

 とまあ思うところを色々と書いてみましたが、どうも観ていて退屈な話が多いんですよね。それは1期もそうだろと言われそうですが、1期はイマイチな話数もありながらも見返してても凄く面白かったのですが、2期はニコ生で観た後にテレビ大阪で放送されるので観てて、醒めてしまってるんですよね。謎の中毒性が感じられない。その辺はやはり1期からパワーダウンしちゃってるように見えてしまいます。
 2期発表時に書いた記事ですが、その時に望んでいたものはほとんど描かれていないんですね……。もうちょっと、ちゃんと意図された構成での2期を観てみたかった気がしました。
http://d.hatena.ne.jp/rikio0505/20110304/1299234861(過去記事)

Web拍手送信