SHIROBAKO16話に観る、魔法を持つゴスロリ様の「神業」と、持たざる者の「エンゼル体操」

 SHIROBAKOも16話まで来ましたが、ものすごくネタ満載で非常に楽しい回でした。ゴスロリ様こと小笠原綸子さんの過去が語られたこともありましたが、屋上の体操やらバッティングセンターやらこれでもかと言わんばかりにぶち込んできましたね。今回はそんなネタの意味するところを深読みしながら、これらが何を示しているのかと、ゴスロリ様の特別さを軽く考えてみたいと思います。

 ゴスロリ様がゴスロリ様となったキッカケはゲーム作品のアニメ化の際に初めてキャラデザとして抜擢してもらったけど、そこでなかなかOKしてもらえず悩んだ末……ゴスロリ衣装という「鎧」を身にまとった、とありました。


完全に「変身」シーンですよね。

 ご覧のとおり、完全に変身シーンですよね。それこそ魔法少女や魔女という感じの。プリキュアまどマギなどの戦う魔法少女ものは、変身した後の姿は戦うための服なわけですから、ここでのゴスロリ様の鎧とほぼ同じ意味を持つものだと考えられます。はいと頷いているだけではダメだと……などとゴスロリ様が言ってましたので、変身した後の姿で今度はモノ申しに行ったのだろうと推察できます。文字通り戦いですよね。
 あと気になったのが変身する前のところです。


電車の通過の後にこのカットなので、何か自殺でもするんじゃないかという不穏さでした。

メガネを捨てるところ。思い出すのは、まどマギのほむらですよね。



マジカルレーシック!(勝手にそう呼んでます) ほむらが過去の自分と決別する様が、ゴスロリ様の変身シーンと同じく目的のために人間を辞めたかのようにも見えるシーンでした。

 暗くなった駅で1人涙を流す若き日の小笠原さん。直前のこの表情からしても精神的に限界に来てますよね。

 この直後に列車の通過のカットが挟まるので自殺でも試みたんじゃないかという気にさせられました。
 なのでメガネを捨て、ゴスロリ衣装を身に纏う(ついでに化粧もする)という変身を経てることから、私生活はともかくアニメの仕事場においては以前の自分を捨てて新たなクリエイターとして生まれ変わったとかそういう意味合いが含まれているのではないかと考えています。
 似ているといえば、ゴスロリ様以前の小笠原綸子さんがAnotherの怜子さんに似ていると自分の中で話題になってます。


 この怜子さんも戦闘服があって、プライベート姿と学校での姿にギャップがありまくりという設定でした。たまにぐでんぐでんに酔ってる時もありますから、学校ではストレスを抱えているのかもしれません。

 これもいわゆる「変身」なのかな、とも思ってます。

  • エンゼル体操を踊る絵麻ちゃんと井口さん

 Bパートで唐突に安原絵麻ちゃんが奇妙な踊りをしていました。もちろん、踊りの振り付けに定評のある水島努監督の発案だそうです。



腰つきがエロい。ガルパンあんこう踊りで、全身タイツでおっぱいぷるんぷるんさせてたのに匹敵する。

鶴の舞……?

 それを観てた井口さんと一緒に踊ることになります。


絵麻ちゃんを横目で観ながら踊る井口さん。

 流行ってるエンゼル体操という話なのですが、どう流行ってるのかとか全くわからないし、本当に流行ってるのかどうかすら怪しいのですが、これを絵麻ちゃんが踊っていて、井口さんもそれにならった、ということだけは覚えておきましょう。

 本題に入ります。
 ゴスロリ様と井口さんの決定的な違いといえば、初のキャラデザの仕事がどうやって来たのかからしてまず違うと思います。井口さんはゴスロリ様の推薦が無ければまず三女でのキャラデザは無かったわけですが、当時の小笠原さんはプロデューサーと監督に直接オファーをもらってキャラデザをやることになったのです。もちろん井口さんと小笠原さんの置かれた状況は違うと思いますが、偉いさんから観ても「キャラデザやらせてみたい」と思わせる仕事ぶりだったことが伺えると思います。
 また、井口さんはゴスロリ様や絵麻ちゃん、みゃーもりにもですけど、ゴスロリ様がナベPや木下監督に強く言ってもらったおかげもあって何とか乗り越えられた場面でしたけど、ゴスロリ様は回想シーンを観る限り、追い詰められた挙句にゴスロリ衣装という鎧を纏った……ところまでしか描かれていないものの、おそらくは1人で難局を乗り越えたのだろうと推測されます。つまり、ゴスロリ様と井口さんなど他の人間では決定的に違う、ということだろうと思います。特にゴスロリ衣装に身を包んだ彼女は、普通の人間を超越した存在であると言い切れるのだと思うのです。
 ゴスロリ様が人間を超越した存在であることは、その身なりからもそうですけど、途中の場面でもそれが伺えると思います。


タローが熱くて持てなくて投げてしまった大盛りたこ焼き皿を片手でキャッチするゴスロリ様。まるで魔法です。

総作監修正。このクラスのアニメーターになるとこんなものなのかもしれないのですが、迷いなく一筆で修正を決めてしまうのはまさに「神業」に見えます。

 そしてそんなゴスロリ様にはなれない(実力はあるけどそこまでの存在にはなり得ない)井口さんはというと……絵麻ちゃんとエンゼル体操を踊り、そしてコスプレはするもののメガネは外さないわけです。


井口さん、もう絵麻ちゃんのほうを観てないしエンゼル体操も覚えましたね。エンゼル=天使になれる気分だけでも味わうための体操、という感じでしょうか。

 井口さんはゴスロリ様の話や生き様は聴いたけど、そうはなれない自分はどうすればいいのか考えた上での色々な行動だったのだろうという感じでしょうね。メガネは捨てないし髪型も変えることもない、過去の自分とも付き合いながらこの局面を乗り越えていこうとしている姿が素敵です。きっと、ゴスロリ様は天才で、井口さんは努力型なのだろうと思うのですよね。
 そういえば「えくそだすっ!」はゴスロリ様がキャラデザだったわけですが、オリジナルアニメでかつキャラ原案もいなさそうですから彼女が1からキャラデザまで担当したアニメ、ということになりそうです。SHIROBAKOではキャラ原案を立てていますし、P.A.WORKSにとっても「グラスリップ」くらいでしかやっていないことでもあり、アニメーターが1からやることの難しさも伺えると思います。そんなえくそだすっ!ですが、その中で描かれてるキャラクターが、アイドル姿とそうでない素の状態とではえらく見た目からして違うのですよね。

 そこが凄くゴスロリ様と似ている気がするんですよ。彼女自身を落とし込んだキャラデザなんだと思えば、より一層面白く見えるような気がします。そもそも中の人も一番変身度合いが高いあるぴんですから。
 あとさきほど言及した、ゴスロリ様とまどマギのほむら、Anotherの怜子と近い存在だという話ですが、ほむらは魔法少女になった時点で人間ではなくなっていた、怜子はあの時点では既に死者であることとの繋がりもありそうな気がしています。そうでもないと、あの北の侍のごとくな華麗なバッティングと、思わず「アニメになりそう」とみゃーもりが言ってしまうような現実ではあり得ないピッチングフォームの説明がつきません。


 やはりゴスロリ様は魔法少女のような存在かつ、本当に浮世離れしてるキャラクターなんじゃないかと思ってますがどうでしょうか。
 ちなみにですが、この話数のバッティングセンター周りは、水島努監督作品でもお馴染みで、かつ劇場版魔法少女まどか☆マギカ新編のキャラクターデザインも担当されている谷口淳一郎さんが原画を担当されているそうです。


 谷口淳一郎さんといえば「おおきく振りかぶって」のアクション作監でもあり野球シーンやるから手伝ってもらったのかな? とも思いましたが、主にゴスロリ様担当だったことを考えると、まどマギのほむらとの繋がりもあるんじゃないかと深読みしてしまうわけでした。

その、えくそだすっ!の1話が収録されています。某イベントで観させていただきましたとても面白く、2話が楽しみなりました(制作未定です)。