京アニはシャフトの猿真似がしたかったのか？〜アニメ「氷菓」1話より

アニメ

　京都アニメーションの新作「氷菓」が始まりましたので観ましたが、ただ作画が綺麗なだけで特に何も引っかかるものがなくただただつまらなかったです。何がつまらないって、ミステリーネタが小ネタっぽいレベルなのとか、1話で描いている内容がひどく少なく感じたこと、何よりストーリーが面白く無かったので、これ22話もやるのか……という感じでした。
　さてそんな中でも特に気になったのが、何か今まであまり京アニがやってこなかったようなことをやっていることです。それがちょっとシャフトがこれまでやってきたようなことじゃないかという疑問を抱いています。2点ありますので紹介していきたいと思います。

  • 唐突過ぎて浮きまくりの演出

　まずはこの場面をご覧ください。

　えるが主人公に迫る（表現悪）場面での髪の毛が伸びて絡みつく演出です。こういう絵になるシーンが2度くらいありましたが凄く唐突感が個人的にありました。普通の会話劇メインの中に非現実的な演出過剰な感じの絵が入っていて、アクセントのつもりなんでしょうけどただこういう演出がやりたいだけのシーンにしか見えませんでした。えるに不思議な力があり、髪の毛で獲物を絡めとって精気を吸ってしまう、という設定があるのならまだわからないでもないのですが……。
　演出がやりたいだけの演出、といえば個人的には新房シャフトが思い出されます。偽物語でも非常に演出過多というか、会話劇しかないので演出で乗り切った感が強く合ったように感じました。ただし新房シャフトといえば、背景他の描き方が写実的じゃないところが特徴的で凄く非現実的な演出が映えるようにそもそも作られていると思ってますし、昨日今日始めたわけでもなくずっとやっていることなので芸風としても見ることが出来ます。建物そのものは実際にあったものをモデルにしてたりはするんですが、大きさや広さ、幅と人間との対比のつけ方が凄く誇張されたりデフォルメされたりしてて写実的とは真逆の描かれ方をしてるのが新房シャフト流の描き方で、この部分は写実的な京アニの路線とは反対だと思ってます。
　京アニ作品は半分くらいしか観てないのでわからないのですが、少なくともこういう演出を突如入れてくるような描き方はあまりしてこなかったと思っているので、なんとなくシャフトっぽいことを付け焼刃的にやってみた感じが凄くしてました。「日常」あたりで得たノウハウを活かしているのでしょうか？　ちょっと僕には、綺麗な映像と効果なだけで、意味のある演出だとは思えませんでした。
＜追記＞
　ここもそれっぽい演出ですよね。初見ではあまり気にならなかったあたり、自然だったのか目を引く感じではなかったのかわかりませんが。

  • 過去の作品のキャストの安易な流用

　氷菓の1話に出てきた3キャラは、男2人がCLANNADの岡崎朋也と春原陽平と同じキャストで、えるがけいおん！の田井中律役でした。まあキャストの流用は、ハルヒ→らき☆すたで平野綾を重用したりしたこともあって過去に実績はあるんですが、CLANNAD→けいおん→日常あたりではキャスト一新を繰り返していて京アニとするとその路線で行くのか、あるいは日常では角川系の声優さんが多く起用されていたので企画元に左右されるのかという感じがしてましたが、今回はそういうわけではなく敢えての過去作からの流用でした。
　キャストの流用といえば新房シャフトのお家芸的なところがありますよね。「シャフト声優」なんて呼ばれ方をして、贔屓で起用されているんじゃないかという批判の声もあるわけですが、あれは新房監督が信頼の置ける役者さんだという意味で多用しているだけだと考えています。それに、例えば魔法少女まどか☆マギカで暁美ほむら役にキャスティングされた斎藤千和さんは、恐らく化物語の戦場ヶ原ひたぎの偏愛的なところも多少は意識されての起用だったような気がしてますし、佐倉杏子役だった野中藍さんを電波女と青春男の藤和女々役に起用したのは、敢えての中学生から40女というギャップも埋められる可愛さを買われての起用だったと思いますし凄く明確で双方への相乗効果もある流用の仕方をされていると思ってます。
　氷菓のCLANNADコンビですが、確かに斜に構えた主人公と軽い親友という性格的にはCLANNADの2人そのまんまなんですが、会話が高度なのか何なのか掛け合いに楽しさが感じられませんでした。朋也の持つ重さや春原のもつアホさ、そしてその2人がやる破壊的な掛け合いと比較すると当然なのですが弱く感じてしまいます。違っていて当然といえば当然なんですが、なら何でこのコンビを起用したのかということにも繋がってきます。そこでこのコンビを起用した相乗効果みたいなものを期待していたわけですが、その辺で首を傾げたくなるわけです。
　りっちゃん繋がりで佐藤聡美さんの起用もやや疑問です。佐藤さんの役柄で言えばお嬢様というかおしとやかなタイプといえば俺妹の田村麻奈実な路線でりっちゃんはあまり関係ありません。まあえるを聴いてるとところどころりっちゃんが出てきているので、タイプとしては真逆なキャラの印象が出てしまっているわけですが……。これもあまり効果的な起用とは思えないんですよね。もちろん、澪とか紬役でそのまんまだと本当にけいおんキャラが強くなりすぎるので駄目なんでしょうけど、シャフト声優さん的な良さを生かす起用にはなってないような気がしてしまうんですよね……。
　キャスティングってその作品のそのキャラを一番生かせる人を起用できるかどうかが一番大切で、馴染みの声優さんの起用というのは本当の所は逃げの手だと思ってます。けいおんや日常では有名とは言えなかった声優さんたちを見事に引き上げた京アニでしたから、この路線変更は安易なキャスティングに見えてしようがありません。

                          • -

　指摘した箇所はもしかしたら的外れかもしれませんし、そこが面白いんじゃないかという反論もあるかと思いますが、個人的には京アニが「演出が弱い」という指摘への反論であったり、まどか☆マギカや偽物語など新房シャフト流の演出や手法を猿真似しているように見えてしまうのですがどうなんでしょうね？
　氷菓という作品そのものについては2,3話くらいまで観て判断してみたいと思いますが、個人的にはアニメに向かない原作を工夫なくアニメ化しちゃった感じに見えてるので厳しいかなと思ってます。
Web拍手送信